「行ってきまーす」

「行ってらっしゃーい」

 今日もいつも通り、お母さんに見送られながら学校へと向かう。

「真琴ー!」

「あ、萌恵。おはよう」

「おはよう」

 友達の萌恵に、「どうしたの?なんかご機嫌だね」と声をかける。

「えっ?ちょっと真琴知らないの!? 今日転校生くるんだよ?」

「そうなの? 知らなかった」

 萌恵は目をキラキラさせながら「しかもその転校生、超イケメンなんだってさ!」と話すから、私は「へえ、そうなんだ」と言葉を返す。

「あーあ、早くどんな子なのか見たいなぁ」

「イケメンってねぇ……萌恵、彼氏いるでしょ?」

「いるけど、それとこれとは別だよ!」

 そんな萌恵に私は「別ってなに?」と聞き返す。

 だけど私はこの時、まさか自分が"吸血鬼(ヴァンパイア)"の餌食になるなんて、想像もしていなかったーーー。



「ほらー席つけー。ホームルーム始めるぞー」

 チャイムが鳴ると同時に、席に着くみんな。 いつもより行動するの早いな、みんな。
 やっぱ転校生が来るから……?

「えーみんなも知っていると思うが、今から転校生を紹介するぞ。 おーい、入ってこい」

「はい」

 先生の合図で転校生が入ってくる。 そしてその瞬間……。
 "きゃああああああ!"という女子たちの黄色い声援が響き渡った。
 う、うるさい……!

「おい、うるさいぞお前ら。静かにしないか!……さぁ、自己紹介しなさい」

「はい。桜木ユズルです。 今日からよろしくお願いします」