舞台は無事……? 無事かは周りが決めることだけど幕を閉じた。
体はもちろん震えつつもセリフもなんとか吐き出して、コンタクトがなくても目玉は震えぼやぼやの視界の中進んでいき、ところどころ僕が喋ると笑いが起きるが……この笑いは……昔僕が晒されたときの笑いとは違うといいんだけど。

そして僕と多摩部長のキスシーンでは女の子のキャーキャー声が強くなった。

僕はほぼ意識はその頃には無くなっていたが唇に温かいものが触れた。その唇も震えていた。

多摩部長も……緊張するんだ。

そう感じとって目を閉じた。



評判を聞くとやはり多摩部長のスター性もあって高評価。
クラスのみんなからも褒められたし、演劇を本格的にやっていた淳二は少し嫉妬したのかしばらく口聞いてくれなかったけど数日したら
「お前、めっちゃよかった、悔しいくらい」
って言ってくれた。

僕は
「淳二、演劇部誘ってくれてありがとう。僕は裏方じゃなくて役専属でいくよ」
というと淳二はグーを出してきて僕もグーを合わせた。
そこに多摩部長がやってきた。
「是非とも頑張ってほしい……自分のやり方、やりやすいようにね」
と微笑まれると僕はドキッとした。

多摩部長たち三年はここで引退、受験生になった。

その前に僕はなんでキスをしたのか聞かないままだった。