我が男子校の演劇部。
男子だけで構成されてて女役も男が演じる。この辺りじゃ有名だったらしく学校祭では他校の生徒や特に女子高校生がそれを楽しみにくるらしい。

どうやら淳二はこの演劇部に入るためにこの高校に入ったらしい。
知らなかった。近くの高校だったけどそんな有名なところだなんて。


舞台のある体育館の二階から見ると外で待っている列はやはり女子高校生が多い。こんなにも女子高校生からの視線を浴びることなんてない。あ、もちろん在校生の男子たちもいるが彼らは僕が、あの人前で緊張する僕が劇をやるだなんてありえないと思うだろう。
どこでどうとちるかその目線も怖い。
「たける、深呼吸……」
そういう淳二も僕の肩に乗せる手が震えてた。あんな余裕な彼がだ。
そいや淳二が言ってた。普段分厚い眼鏡をかけてるけど役をやる時はかけないその理由は客席がぼやけて見えて平気になるんだ、と。

いや客席以外、手元さえもピントが合わない。コンタクト外したいくらいだ。

ごくり。


音響は他の照明やスタッフの一年に任せたがそれも心配なくらいだ。

ちらちらと僕が機材を見ていると
「ここは俺らに任せろ! お前はちゃんとセリフ言えるように劇に集中しろ」
って……やっぱりそっちか。吃音、僕はただの下のもつれと緊張だと思ってたのにはっきり言われてしまうとダメだ。

「のんびりした執事の役だからな。ゆっくりしゃべればなんとかなるだろ」
「でも先輩は少しシャキシャキ話してたし……」
……すると二年の先輩が
「今は役を自分のものにするんだ。ゆっくり喋ってなんなら内容変わらなければセリフも短くしたら言いやすいようにしてもいいんじゃないか?」
そ、そんな高度な技できないっ!! しかもよく考えたら初舞台じゃないか。

セリフも言いやすいように考えてそれを覚えて一回の通し稽古しただけで本番だなんて……そして僕はもう一つのことでさらに体を震わせる。

なぜなら……



多摩部長とのキスシーンがあるからだ!!!!