多摩部長以外にも三年は3人、彼らは秋の学校祭を最後に引退、二年は5人、そして一年は僕らを含めて8人。僕以外はみんな演劇をやりたい人ばかりで淳二含め三人は新人扱いで出演して残りの五人で手分けして裏方に回った。

先輩含め部員たちとはすぐ馴染んだ。
だが毎日やる発生練習が上手くいかなくて舌がもつれる。
一部の部員に笑われるのだが
「何度も練習すればできるようになるさ、めげないで」
と多摩部長……。嬉しかった。

彼が舞台の上で舞い、スポットライトを浴びている姿。
他の先輩たちや淳二たちも堂々としていてすごいが多摩先輩はそれ以上にすごい。

気づけばセリフも全て覚えていてつい口に出るようになった。

でも僕は人前だと震えてしまってセリフもうまく言えない。ガクガクして劇をダメにしてしまう。
「こら、たける! 音響のタイミング」
「すいません」
しまった、劇に集中しすぎて……裏方もダメだ。小道具だってまともに作れやしない。

……。

劇本番前に一年が2人辞めた。役が欲しかったのに発生練習や何度も通し稽古ばかりで疲れた、とのことだ。

僕だって辞めたかったけど淳二は毎日歯を食いしばって練習している。

……正直淳二以外に気軽に話せるものはいない。僕の舌のもつれを何も言わずにいてくれるのも彼だけだ。

演劇部辞めたら多摩部長の近くで劇を見ることもできない。
……。


その時だった。
「おい! 誰か代役できるか!」

どうやら二年の先輩がいつまで経っても来ないと思ったら盲腸で緊急入院だとか。
もう裏は大慌て。

「みんな落ち着いて。彼の役は出番は長いがセリフも少ない……」
「だが長いからこそ他のもので二役は無理だ」
役者のみんなで話し合っているけど僕は裏方……関係ないや。
発生練習でさえも緊張して呂律も回らない僕なんて。

「たける、やるか?」
多摩部長!!! 周りのみんなも僕を見る。
「たけるが?! できるわけないだろ」
「度胸もなく震えてるやつが?」
……やっぱり……無理。それに多摩部長たち三年生の劇が台無しになる。

視線が、多摩部長の期待が僕の体を震わせる。目の玉が震えコンタクトのピントをずらす。

「ほれみ、この時点でガクガクじゃないか」
「それにこいつは吃音だ。大丈夫ですか?」
心無い言葉に僕は口元も震える。

吃音、僕の声の震えは、呂律の回らなさはそれなのか。

……初めて聞いた。

パシッ

多摩部長が手を叩く。
一斉にその場が静まる。

「他のやつのセリフを一切覚えようとしない奴が、黙れ。たけるは劇中、音響をしながらセリフを口にしていた」

……多摩部長! 見てたの……?
なんやかんやいってた人たちは黙った。

「部長、みんな。僕もたけるを推薦します」
……淳二!
「もし噛みそうになっても僕、そして他の一年でカバーします!」
他の2人も頷いたけど……どうカバーするんだよおおおお。

「通し稽古は一回しかできない。すぐに準備しろ、たける」
「は、はあい、、!」
緊張で声が震えて上擦った。