「やべぇ、柄にもなく緊張してきた」
素直を今の心情を吐露すると隣にいた涼介が驚いた顔をする。
「緊張?敦が」
「いやいや、俺だって緊張くらいするよ」
俺らは読書サークルの部室の前にいた。涼介が元々所属しているサークルだ。
対して俺はどこのサークルにも所属していない。それでいいと思っていたが涼介に誘われたこともあって今日は読書サークルに見学に来ている。
又最近俺が読書に熱中していることもサークルを検討する理由の1つだ。
涼介が暇な時間があれば読書をしていると聞いてお勧めな本を聞いてみた。そこから読書にハマってしまったのだ。
「けどさ、読書サークルに所属してしている人って大人しい人が多くない」
「まぁ、そうだね」
「だよなー」
返事をしながら頭を抱えた。常にうるさい俺はきっと場違いではないだろうか。
「まぁ、見学だしそんなに気負わなくてもいいか」
気持ちを切り替えてドアを開ける。そして室内にいた1人の女性と目が合う。
「あ、あの時の。合格してたんだ」
受験の日に話した名前も知らない女性。俺に気付き彼女の方から声をかけてくれた。
「はい。無事に」
「そっか」
彼女は陽だまりみたいに柔らかく笑う。
「実は密かに君のこと探していたんだ。けれど見つけられないから気にしてたの」
「学部が違えば接点ないこと多いですからね」
「私は文芸部だけど君は」
「社会学部です」
「そっか。涼介と一緒に入っていたからてっきり法学部かと思った」
2人で話してしまっていたが彼女が自然と涼介にも話を振る。
「敦とは英語の授業だけ一緒です」
「そうなんだね。私は森川葵(もりかわあおい)。文学部2年」
「相葉敦です。よろしくお願いします」
「よろしくね。相葉くん」
こんな可愛い先輩がいるなら読書サークルも楽しいかもな、なんてことを思った。