店でこれを見た時の私と同じことを考えている。

それがちょっと嬉しくて、嬉しくなった自分が悔しい。

楽しげに笑ったハルカはしばらく間を置いて「ちょっと待ってて」と顔を部屋の中に引っ込める。

数分もしないうちに玄関の扉がゆっくりと開き、ハルカがひょこっと顔を出す。


「ねぇねぇ、ひとつお願いしてもいい?」


もしかしたらそう来るかもと思って、ちょっとにやけそうになるのをグッと堪えた。


「聞いてやらんこともない」


ハルカがワクワクした顔で身を乗り出した。


「後ろ乗せて」


やっぱりな、と心の中でほくそ笑んだ。絶対にハルカならそう言うと思っていた。


「……今日だけだから。特別」


やった、と嬉しそうに声をあげたハルカが後ろに回る。座ろうとしたハルカに、前かごに入れていた荷物の存在を思い出し「あ」と声を上げる。


「ハルカ、ちょっと待って」

「どうしたの?」

「いいから」


前かごに入れていた袋を取り出す。

ついさっきショッピングモールの百均で買ったばかりの茶色い座布団。安かったから少しペラペラしているが、ないよりはマシだろう。

適当に荷台に括り付けて、ハルカと目が合う前に「ん」と座るように促した。


「わあ、これお馬さんの座るとこみたい」


嬉しそうに座布団をぽんぽんと叩く音がして、緩みそうになる頬をぐっと我慢して仏頂面を作る。