「またか」
「またですねぇ」
そう言いながら当たり前のように荷台にまたがるハルカにため息を吐いた。
ハルカと私の奇妙な巡り会いはあれから何度か続いた。
「猫追いかけてたら、分かんなくなって」
「自分が方向音痴な自覚ある?」
学校からの帰り道や、
「こっちの方が近道な気がしたんだけどなぁ」
「そういうのは上級者がすることなんだよ」
お使いの途中や、
「本読みながら歩いてたら……へへ」
「もういいから、さっさと乗って」
図書館に本を返しにいく時も。
毎日ではないけれど、ハルカはよく迷子になって現れた。最初は面倒で本当に嫌だったけれどこう何度も続けば、面倒臭がるのが面倒になる。文句は最初の一言だけになった。
今日もお母さんに頼まれてスーツをクリーニング屋さんで受け取った帰り道に、キョロキョロ右往左往するハルカを見つけてしまった。
荷台に乗せるとボロい自転車が悲鳴をあげる。今壊れたら絶対にハルカのせいだ。
自転車を漕いでいる間私が黙っていても、ハルカは吟遊詩人のように自分で作った曲を鼻歌で奏でたり鳥に話しかけたり、勝手に楽しくやってくれている。