『そうだったな。つーか、悪い。今日やる予定じゃなかったが次の大会までノルマが達成出来そうになくて。ちょっと手伝ってほしい』


「全然大丈夫。今日まだログインしてなかったからミッション達成してなかったし。ちょうど良かった」


『サンキュー』



ヘッドホン越しで話す銀華は生の声よりも低く聞こえてきてゾクゾクする。


生の声もいいけど、このこもったような声も好き。


僕はミッションをクリアしながらも別のことを考えていた。


服部亜嵐と松村銀華は幼なじみ。それは学校には知れ渡っていた。家が隣同士で幼い頃から仲が良い。


別に何かきっかけがあったわけじゃないが気づいたら銀華が隣にいた。銀華はかっこよくて、優しくて女子にモテる。


だけど銀華は女子の告白をことごとく断り、今の今まで彼女らしき存在はいなかった。


それはおそらく、“僕”が原因だろう。


僕は小学生の頃からゲームが好きで勝負事のゲームは負けたことがなかった。そのことに気づいた時は嬉しくなって。


人見知りで見た目もかっこよくない。話すのが苦手。そんなダメダメな自分の得意なものを見つけた。それがゲームだった。


だけど住む世界の違う銀華はゲームなんてしないだろうな、と思っていたけど僕の持っていたゲームを貸したら僕以上にハマっていた。