この時はもう何も考えていなかった。


ただ用事を終わらせる、という目的しか頭になかった。


今日の夜は、銀華を独り占めできる……。用事が終わる頃、そんなことを勝手に思っていた。


***


あれから時間が過ぎ、全部の用事を終えた夜9時。僕は自分の部屋でヘッドホンとパソコンを繋ぎ、戦闘態勢に入る。


ーーピコン。


色々準備をしていると机に置いておいたスマホが震える。確認するとメッセージを受信していた。


『準備出来た。いつでもいいぞ』


そんなぶっきらぼうなメッセージの相手は銀華。僕は返信してからパソコンのあるアプリを起動させた。



「ごめん、ちょっと遅れた」



ヘッドホンのインカム越しに話しかけて謝る。僕は聞こえているかどうか確かめるために、少し大きめに話す。



『大丈夫。時間ピッタリだ。さすが真面目な亜嵐だな』


「……真面目は止めろよ。今は優等生じゃなくて“ゲーマー”なんだから」



ヘッドホン越しに聞こえた声にドキッとしながらいつも通りに話す。だけど心の中は緊張と嬉しさで頭がいっぱい。


正直ゲームのことなんて1ミリも考えていない。今は銀華のことしか考えていない。