「これやってくれたら今日の夜“あれ”に付き合ってやるよ」



銀華はプリントを机に置くと、顔を近づけそう耳元で囁いた。息が耳の中に入ってきそうなくらい近くて思わず心臓が跳ね上がる。



「……じゃ、頼んだぞー」



身動きが取れなくなった僕を置いて銀華はヒラヒラと手を振りながらそそくさと去っていった。


机にはポツンと取り残されたプリント1枚。そして……。



「反則だろ……」



顔を真っ赤に染めて呆然と立ち尽くす僕がいた。顔はマスクで半分以上隠れているからみんなには見えていないだろうけど。


僕の顔は燃えるように熱かった。



「……ねぇ。松村くんと服部くんって本当に幼なじみなの?」


「え?違うんじゃない?ただのパシリにしか見えないけど。ほら、松村くん陰キャの服部くんに目をつけてるんだよ」



なんて女子のヒソヒソ声が聞こえたけど気にしなかった。確かにこの光景はパシリにしか見えないかもしれない。


だけど、僕にとっては“ご褒美の時間”でもあった。



「今日できるとか聞いてないんだけど」



嬉しさを噛み締めながら僕はプリントを手に持つと職員室にまっすぐ向かう。