あれから一ヶ月とちょっとが経過した。

 朝夕の挨拶はちゃんとする。移動教室にもみんなで一緒に行く。昼休みも一緒に食べたりしている……みんなで。放課後、たまに遊ぶ……みんなで。
 そうやって普通に話すし、つつき合ったりもする……キスする前みたいに。

でも、なんか避けられてるんだよな……。

 ユミは俺と二人きりになるのをうまいこと避けている気がする。体育の授業でだって、柔軟体操のときに俺と組まなくなった。

 ふう、とため息をついて、窓際で会話しているユミがいる輪を眺める。
 そろそろ教室移動なんだよな。声、かけに行ってみるか……。

「蓮見、移動教室一緒に行かないか?」

 そう言って椅子から立ち上がりかけた俺に声をかけたのは、同じ「新顔」の三人グループだ。

「ああ……うん」

 なんとなく断り辛くて、俺は誘われた流れのままに教室を出た。
 すると、いきなりの話題。

「蓮見、最近堀内となんかあった? あんまりニコイチにならないよな」

 いきなり急所を付いてくる。まあ、だから声をかけてくれたんだろうけど。

「いや、まあ。みんなで、って感じになってるって言うか」
「けどなんか、なんか蓮見だけ浮いてるっていうか……あ、悪い意味じゃなくてさ」

 核心を突かれて顔色が変わってしまったのだろうか。言ったクラスメートは慌てて取り繕う。

「”上がり”はやっぱ、仲間意識強いじゃん。俺たち新顔とは距離がある。堀内も気分屋っぽいところあるし。でも、周りの奴らは堀内中心って言うか……その中で蓮見だけが新顔だし、最近は上がりに気を遣ってる感じもして……」

 クラスメートは「ごめん、変な言い方として」とすまなそうに言葉を締めくくる。

「……いや、そうだと思う。なんでか、今までユミが俺に構ってたから周りも仲良くしてくれてたとこあると思うし。……なんとなくだけど、ユミもそろそろ俺に飽きてきた感じあるんだよなー」

 ギュン。ググギュン……答えた途端に、胸が捩れに捩れる音がする気がした。

 あー、胸いてぇ。喉が熱い。自分で言って自分で傷ついている。

「……ははっ。なんかこれ、男の会話じゃなくね? 男子校マジックかよ。でもまあ、俺なんかそうやって人に飽きられるモブ陰キャだけど、良かったらこれからも誘ってよ」

 気まずい場と、傷んだ心を収集すべく、早口で言った。頼む、空気よ変わってくれ。
 情けなくも泣きそうになってくる。

「蓮見、なんかごめん! 俺たち、単に新顔同士で蓮見とも仲良くやりたいな、って前からずっと思ってたんだよ。変な感じに言って悪かったな。マジで男子校マジックかも。中学の時、女子がこんな感じだったよな」

 相手も早口で一生懸命だった。本当に俺とうまくやりたいだけなんだ、ってちゃんと伝わってくる。
 そう、悪気なんかない。誰も悪気なんかないんだよ。