「なぁ、ユミ。確認だけど、成瀬の"ユミ大好き"ってなんだよ。あいつ、本当に隙あらばユミを落とそうとしてるんじゃないのか?」
「ばっか。なら協力するわけないじゃん。成瀬は情がすごく深いんだよ。俺がカミングアウトしたときも一緒に泣いてくれて、俺に好きな(ひと)ができたら絶対応援する、なにがなんでも成就させてやる、って……そしたら本当に俺より張り切っちゃってさ。だから蓮見が聞いたのもそういう話しだと思う」
「なるほど……」

 なにがなんでも成就って、過激と言えば過激発言だけど、それなら辻褄が合う。
 だけど……つまり俺は、あいつらにいいように転がされていたわけだ。やってくれるよな。おかげでとんだ遠回りをしてしまったじゃないか。
 とはいえ、こんなに痛いほどの恋心に気づけたのも、あいつらのおかげか。

 初恋が幼稚園の先生の「恋愛旧石器時代」の俺だ。ユミへの恋心に気づいたところで、そのうち男相手に恋をしていることに悩み、自分からは行動できなかったかもしれない。

 そうだ、今だってユミから思いを聞かせてくれたんだから。
 ユミは過去も、悩んだことも全部全部打ち明けてくれて、俺をずっと好きでいてくれたことも教えてくれた。

 キスも……ユミから仕掛けてくれなければ、俺はこの恋心を知ることさえできなかったかもしれない。

「ユミ……マジで好き。めちゃめちゃ好き。離れたくないくらい好き」

 ユミが心を隠して頑張ってくれた分、何回でも伝えようと思った。俺を好きになってくれてありがとう。勇気を出してくれてありがとう。俺、これからたくさん「好き」を還していくから。

 ユミは俺が「好きだ」と言うたびに、俺の胸の中でうん、うん、と頷いて、鼻をすすっている。喜んでくれているのがわかって、また何度でも伝えたくなる。

 けれど……。

「なあ、ユミも言ってよ。聞きたい……」

 ユミの可愛い顔で言ってほしくて、つい強欲になってしまう。

「蓮見、なんか人格変わってない……? でろでろに甘いんだけど……そういうキャラだっけ……」

 ユミは顔を赤くして視線を斜めに落とし、顔を俺の胸から離した。
 だけどもう逃がすもんか。俺はユミのうなじを引き寄せ、顔をさらに近づけた。

「ユーミ。言って」
「──好き! 好きだよ、もう充分わかってるくせに!」
「主語述語がない。なんなら形容詞まで入れて」
「お前なあ……」

 赤い顔のユミが、あきれたように溜息を吐く。
 けれどすぐにまっすぐに俺を見た。

「……俺は、蓮見が、好きだ。」

 決意表明みたいな、強い口調。俺の腕を掴む手にも、力が入る。

 くーーーー!! これだよ、これ。これが両想いってやつ!

 俺はユミの頬を挟む手に力を入れて、またユミにキスをした。