ユミはすっかりしょげている。
 言い終わってから肩を落としてしばらく沈黙し、唇を噛んでいた。

 ユミ、泣いているのか? 体を小刻みに震わせて……なんて可愛いいんだ。
 ユミがこんななのに、俺、ユミがいじらしくて仕方ない……抱きしめてしまいたい。

「ユミ……」

 声をかけると、ユミはそろりと俺を見上げた。

「蓮見、俺こんなんだけど、せめて友達でいてくれないか? もう変なことは絶対にしないから……わっ」

 懇願する瞳に我慢の決壊が崩れ落ち、ユミを引っ張り上げてベッドの上に乗せた。
 ありったけの力でぎゅうぅぅと抱きしめる。

「……友達に戻るなんか、もう無理だよ」
「……蓮見?」
「俺……ユミが好きだ」

 言ってユミの口にかじりついた。そして、あの火よりも大きく口を開き、舌でユミの唇を割って、夢中で舌を中に差し入れる。
 ユミは俺の背にしっかりと掴まり、同じように舌を絡ませてくれた。

 ちゅ、くちゅり、と濡れた音が耳の中に響く。口の中は互いの温かいぬめりが混ざり、溶けたチョコレートよりも甘い味がした。

 どれくらいそうしていたのか。閉まっているドアの向こうで生徒の声がして、我にかえる。
 ゆっくりと唇を離すと、ユミはとろけそうな顔をしていて、半開きの唇の端からは、どっちのものかもわからない雫がついていた。

 うーわー。なにこれ、めちゃめちゃ可愛いんだけど。なんだ、この顔。
「蓮見がすごく好き」ってもろに伝わってくる。
「もっとキスして」にも見えてくるし……こんな顔を見たら、独占欲がむくむくと湧き出てきてしまうじゃないか。

「ユミ、もう俺以外の(ヤツ)と絶対にキスしたらダメだからな。俺、誰にもユミを触らせたくない」
「だから誰ともしてないって……俺も蓮見が初めてなのに……」

 俺に顔を挟まれているユミは、照れて目を反らしがらも唇を少し尖らせた。
 そのアヒル口が可愛くて、今度は軽く唇を当てて、吸った。

「は、蓮見……」

 さらに照れて頬を紅く染めるユミ。あぁ、可愛い。可愛い。どうしてあの日までこの可愛さに気づかなかったのだろう。
 俺はユミを腕で包み、頭に頬ずりをした。

 ユミは俺より小さな子供みたいになって、俺に身を任せている。いつもは勝ち気なユミがこんなふうに甘えるなんて、これがツンデレってやつなのだろうか。

「ユミ、可愛い……好き……」
「……ばか。……でも、俺の方が蓮見が好き……」

 ユミが俺の体操服の背側をきゅ、と握る。

 ──くぁぁぁ。やばい。理性が飛びそう。とりあえずもう一回キスしていいかな? でも……待て、俺。
 俺にはまだ不安要素が一つあるじゃないか。