そして「協力してやる」と皆が言ってくれて、蓮見も含んだグループになってじわじわと距離を縮め、少しずつ二人で過ごす時間を画策して貰うようになると、贅沢にも欲が出てくる。

 もっと一緒にいたい。
 もっと近づきたい。

 ──蓮見にも、俺を好きになってほしい。
 そう思うようになってしまったんだ。


 そしてあの決戦の日。
 俺は緊張でガチガチだったけれど、サキの教えどおりに余裕の表情を演じ、蓮見に仕掛けたのだ。

「それで俺、あの日に蓮見にキスを持ちかけて……当たり前に否定されたけど、蓮見が"キスは本当に好きな子としろよ"って言うから、じゃぁ俺としてよ、って泣きそうになった。笑ってごまかしたけど、蓮見の中で俺が"好きな子"じゃないのが悲しくて、蓮見を煽るような嘘をついて……」

 蓮見の右手を握りながらことのあらましを話す。でも、後ろめたくて顔を見ることができない。

 男に無理やりキスされるなんて。反対の立場なら、俺も相手を突き飛ばして殴ったかもしれない。

 でも、あのとき。
 蓮見は初めこそ驚いて抵抗していたけれど、俺が思いを込めて何度も唇を啄むと、力を抜いて目を閉じ、俺のキスを受け入れたように見えた。
 
「蓮見、さ……俺がいっん口を離したら、今度は蓮見からキスしてくれたじゃん。しかも口を開けるし……あれで俺、もしかして蓮見も俺が好き? とか自惚れちゃって……」
「う……それは、その……」

 蓮見の右手がピクッと震える。声がとても恥ずかしそうだ。

「それにさ、聞いたら蓮見、"むしろ気持ちよかった"って、頭、撫でてくれただろ……?」

 あの瞬間、俺は喜びに震えた。
 本当に好きになった人とキスをして、受け入れて貰えた。植物を撫でている優しい手で、俺にも触れてくれた。

 唇も……たった皮膚一枚の触れ合いだ。それなのに、どうしてこんなに気持ちがいいのだろう。暖かくて柔らかくて、少しだけ感じた蓮見のぬめりは植物の活性剤のように俺に力を注いで、身体中を幸せな気持ちで満たした。

 それで俺が「またしよーな」と言うと、蓮見は今みたいに恥ずかしそうにして、ぎこちなくも頭を縦に振ってくれた。

 また、心が震えた。本当は叫んで走り出したいほど嬉しかった。

 蓮見も俺と同じように感じてくれたのだ。
 このまま何度かキスを続けていれば、いつか本当に俺を好きになってくれるかもしれない──


「けど、次の朝サキに言ったら、今は蓮見は快楽に流されてるだけだ。恋愛未経験な奥手は快楽に流されやすいから、このまま続けてもそれだけの関係になる。次はしばらく引いて、アメムチ作戦で行くぞ、って」

 蓮見にはないだろうけど、蓮見を好きな女の子が現れて、同じようにキスしてきたら蓮見はすぐにそっちに流されて行くぞ、と脅しが入ったのは蓮見には内緒にしておこう。

 でも、俺は、その言葉で「女の子が蓮見をさらっていったら」と真剣に怖くなって、そのままサキの作戦に乗っだのだ。