「そ、っか。ごめんな。ユミ。成瀬と帰りたかっただろうに」

 俺ってば人の恋路の邪魔でしかないじゃん。成瀬の気持ちもユミの気持ちもわかってんのに、さっき倒れた時にユミに抱えて貰ってつい喜んじゃったし。アホだよなあ……。

「は? なんで成瀬?」

 なんで、って。それを俺に言わせるのかよ。

「聞いちゃったんだよ……成瀬がユミを好きだって。それでユミもまんざらではないらしい、ってのも……」
「……はあぁ?  なにを気持ち悪いこと言ってんだよ」

 言いながら、ユミは両腕をこすった。鳥肌を収めようとしているらしい。

「気持ち悪いって、ユミこそなんだよ。もう付き合う寸前、みたいな話じゃないの?」
「だから誰がそんなことを……成瀬も小学校の頃からの幼馴染なんだぞ。そんな気持ちになれるか」
「でも成瀬はユミがめちゃめちゃ好きだって……。それに、成瀬とも何回もしてるんだろ? それならそんな気持ちが芽生えることもあるじゃん。隠さなくてもいいよ。俺は偏見を持たないから」

 だって、たった一回のキスで男友達に恋をした当事者だから。
 今まではあり得ないと思っていたけど、俺、わかったから。好きになると性別の壁を越えてしまうのだと。惹かれてしまう気持ちは誰にも止められないのだと。
 俺……俺だって、こんなにユミを好きになってしまったんだから……。
 でも、もう失恋しちゃったけれど。

 ため息をつき、黄昏れているとユミがいよいよ顔を歪めた。

「蓮見、動詞が無い。動詞が。俺が成瀬となにをしてるって?」

 ぐ……そこまで俺に言わせるのか。しかも、動詞無しとか。今そこを突っ込むなよ。言いたくねーよ。

「ユミが、山瀬と、キ……キスを……」

 俺がゴニョゴニョと言うと、ユミはポカーンと口を開けた。ずるいよな、ポカーンとなっても可憐で可愛いとか。

「……まだ頭回ってないのか、蓮見。俺が成瀬とそんなことをするわけないだろ」
「ん? 成瀬とはしないの? なんで? でもサキやマクとはしてるんだろ?」
「するか! そんなもん、友達同士でキスとかするわけないだろ!?」

 んん? どう言うことだ? 話が繋がんねーぞ?

「ユミ、俺とした時、言ったじゃん。友達同士でしてる、って。男友達同士なら本番の練習になるし、仲良しのコミュニケーションみたいなものだって」
「……あ!」

 ユミがあからさまにしまった、と言う顔をした。
 え、なにその反応。まさか……。