「う、美味い……水が、こんなに美味しいとは……っ」
「くっ、ぷはぁ! なんて美味いんだ! 天からの助けとはこのことでしょ!」
「落ち着け、お前たちの喉を潤すだけの量はある」
「はい、はい! ありがとうございます!」
三者三葉、思う存分に水を飲みまくる。
牢をこじ開け、洞穴の外に連れ出したときは、言葉を喋ることもままならなかったというのに、ご覧の通り元気を取り戻したようだ。
鉄級一つ星の新米冒険者パーティーだが、案外逆境に強いかもしれないな。
「――さて、そろそろ話を聞かせてほしいんだが」
現在、俺たちブレイブ・リンツとユスランたちは、山賊の洞穴から来た道を十分ほど戻った場所にいる。
山賊はもちろんのこと、魔物に襲われるとも限らないので、周囲を警戒しつつ話を聞く。
「実は、交易馬車に乗っていたところを山賊に襲われまして……」
彼らがどうして捕まっていたのか訊ねると、どうやら交易馬車でリンツ街に向かう道中、山賊に襲われたらしい。
「あのままだと、奴隷商に引き渡されるところでした」
「奴隷商……そんな奴も絡んでいるのか」
結構面倒なことになってきたな。
山賊を倒すだけでは全貌を解明することはできないかもしれない。
いや、それよりもまず、聞いておきたいことがあった。
「……お前たち、リンツ街に来るつもりだったのか?」
「え? あー、……はい、まあ、その、そうですね……ははは」
何やら申し訳なさそうな表情でユスランが答える。その横に座るフージョは素知らぬ顔で水を飲んでいるし、カヤッタはあからさまに視線を逸らした。
こいつら、俺たちを追いかけてきたな……まあ別にいいけど。
ロザリーは、これでもかと言うほど嫌そうな顔を作っている。気持ちは分かるけど、手は出さないでくれ。一応、手負いってことで救出したわけだからな。
「一旦、町に戻ろう」
ユスランたちを連れたまま、守りながらでは満足に戦闘することもできないだろう。
時間が勿体なくもあるが、このまま放置するわけにはいかない。
「……そうするしかないわよね」
「じゃあ帰るね、歩けないならおんぶするけど大丈夫ね?」
はあ、とため息を吐くが、ロザリーは了承してくれた。
レイも問題ないらしい。だが、おんぶは止めておけ。このあとの探索に響くぞ。
「あ、あの!」
リンツ街へと引き揚げるため、来た道を戻ることにしたそのとき、ユスランが声を上げる。振り向くと、ユスランは真面目な表情で俺たちを見ていた。カヤッタとフージョも同じだ。
「なんだ?」
「ありがとうございます。この恩は一生忘れません」
ユスランたちは深くお辞儀をする。
それはとても短く、けれども心の籠った台詞だった。
過去には一悶着あった彼らではあるが、同じ志を持った冒険者だ。
冒険者証だけがギルドに戻るなんてことは悲しすぎるからな。命があって何よりだ。
「無事でよかったよ」
それから俺たちは、来た道を慎重に進んだ。
往路に二時間掛けた道を、復路は三時間ほど掛けて戻ることになったが、山賊に遭遇することなく、無事に引き返すことができた。
「くっ、ぷはぁ! なんて美味いんだ! 天からの助けとはこのことでしょ!」
「落ち着け、お前たちの喉を潤すだけの量はある」
「はい、はい! ありがとうございます!」
三者三葉、思う存分に水を飲みまくる。
牢をこじ開け、洞穴の外に連れ出したときは、言葉を喋ることもままならなかったというのに、ご覧の通り元気を取り戻したようだ。
鉄級一つ星の新米冒険者パーティーだが、案外逆境に強いかもしれないな。
「――さて、そろそろ話を聞かせてほしいんだが」
現在、俺たちブレイブ・リンツとユスランたちは、山賊の洞穴から来た道を十分ほど戻った場所にいる。
山賊はもちろんのこと、魔物に襲われるとも限らないので、周囲を警戒しつつ話を聞く。
「実は、交易馬車に乗っていたところを山賊に襲われまして……」
彼らがどうして捕まっていたのか訊ねると、どうやら交易馬車でリンツ街に向かう道中、山賊に襲われたらしい。
「あのままだと、奴隷商に引き渡されるところでした」
「奴隷商……そんな奴も絡んでいるのか」
結構面倒なことになってきたな。
山賊を倒すだけでは全貌を解明することはできないかもしれない。
いや、それよりもまず、聞いておきたいことがあった。
「……お前たち、リンツ街に来るつもりだったのか?」
「え? あー、……はい、まあ、その、そうですね……ははは」
何やら申し訳なさそうな表情でユスランが答える。その横に座るフージョは素知らぬ顔で水を飲んでいるし、カヤッタはあからさまに視線を逸らした。
こいつら、俺たちを追いかけてきたな……まあ別にいいけど。
ロザリーは、これでもかと言うほど嫌そうな顔を作っている。気持ちは分かるけど、手は出さないでくれ。一応、手負いってことで救出したわけだからな。
「一旦、町に戻ろう」
ユスランたちを連れたまま、守りながらでは満足に戦闘することもできないだろう。
時間が勿体なくもあるが、このまま放置するわけにはいかない。
「……そうするしかないわよね」
「じゃあ帰るね、歩けないならおんぶするけど大丈夫ね?」
はあ、とため息を吐くが、ロザリーは了承してくれた。
レイも問題ないらしい。だが、おんぶは止めておけ。このあとの探索に響くぞ。
「あ、あの!」
リンツ街へと引き揚げるため、来た道を戻ることにしたそのとき、ユスランが声を上げる。振り向くと、ユスランは真面目な表情で俺たちを見ていた。カヤッタとフージョも同じだ。
「なんだ?」
「ありがとうございます。この恩は一生忘れません」
ユスランたちは深くお辞儀をする。
それはとても短く、けれども心の籠った台詞だった。
過去には一悶着あった彼らではあるが、同じ志を持った冒険者だ。
冒険者証だけがギルドに戻るなんてことは悲しすぎるからな。命があって何よりだ。
「無事でよかったよ」
それから俺たちは、来た道を慎重に進んだ。
往路に二時間掛けた道を、復路は三時間ほど掛けて戻ることになったが、山賊に遭遇することなく、無事に引き返すことができた。