眠れないまま朝になり、集中できないまま1日の授業が終わった。
「これから駅前のショッピングセンターのゲーセンに行かない?」
同じクラスの知明は、いつものようにボクを誘う。しかし、今日ばかりは、知明に付き合えない。
「ごめん、今日は用事があってさ」
「え? ついに進学塾に行き出したか?」
「違うよ」
「今日は七夕だけど、……まさか、豊樹に限って女子と待ち合わせしてるとかなさそうだし……」
「急いでるから、また、明日な!」
ボクは走って、駐輪場に向う。
ホントに来てくれるだろうか?
自転車のペダルを勢いよく漕いで校門を出ると、夏の香りがした。
空は晴れ上がっている。
きっと、今日の夜空は天の川がキレイに見えるんだろう。
一旦家に帰って、制服から私服に着替えると、あの約束の場所を目指す。
七夕だけあって、地元の商店街は短冊の付いた笹や吹き流しが軒先に飾り付けてあって涼やかだ。
堤防に抜ける商店街の中央広場には、机の上に短冊とペンが置いてある。誰でも自由に願い事を短冊に書いて、笹に吊るせるようになっていた。
ボクは自転車を止め、その短冊に青いペンで書き込む。
────好美さんと会えますように。
本当に、彦星と織姫みたいだ。
ボクは願いを込めた短冊を、笹の一番上に吊るした。
そして、呼吸を整え、再び約束の場所を目指す。
堤防沿いを自転車で進むと、昨日、確認した通り、橋と交差する河川敷のスペースが見えてくる。
いるかな? 来てくれているかな?
心臓が高鳴りすぎて、苦しい。
好美さんのこと、本当に好きだったんだと、改めて思う。
あと少し。
河川敷に近付くにつれて、人がいるかどうかが見えてくる。
どうだろう……あと少しで、……。
あの場所が見えた!
いない?
何度も目をこすったり、凝らしたりして確認するが、……やっぱりいない。
ダメか。
もう、忘れたのかな。
橋のふもとに自転車を止め、ボクは河川敷に座り込んだ。
いや、遠いところに住んでいたら、高校の授業終わりにここへ来るには、ボクよりもずっと時間がかかる。
これから、来るかもしれない。
家から持ってきたトートバッグの中から、水とノート、シャープペンを取り出す。
ボクは出かける時に、必ずこの3点セットを持ち歩くようにしていた。
思い浮かんだ詞やフレーズを、すぐメモするためだ。
────忘れられない約束。tonight,so cool
詞(リリック)を書いて気持ちを落ち着かせようとする。
きっと、来る。
短冊にも書いたんだから。
ボクは待ち続けた。
そして、どのくらい時間が過ぎただろうか。
堤防の道を1台の車がやってきて、橋のふもとに停車した。
どうしてこんなところに、車が?
助手席のドアが開くと、女の子が降りた。そして車は女の子を置いて、走り去って行く。
まさか、……あの人……。
すっかり、大人っぽくなっていて、自信がないけど、……好美さんかな?
女の子はボクを不安げに見ながら、近付いてきた。
かわいい。
こんなにかわいかったっけ?
でも、面影はあるような。
声をかけたいけど、違っていたら恥ずかしいし、どうしよう。
「豊樹くん……?」
おそるおそる、女の子は声をかけてきた。
「はい。……好美さん?」
「そう!」
好美さんは、嬉しそうに笑う。いや、ボクも、だ。
「これから駅前のショッピングセンターのゲーセンに行かない?」
同じクラスの知明は、いつものようにボクを誘う。しかし、今日ばかりは、知明に付き合えない。
「ごめん、今日は用事があってさ」
「え? ついに進学塾に行き出したか?」
「違うよ」
「今日は七夕だけど、……まさか、豊樹に限って女子と待ち合わせしてるとかなさそうだし……」
「急いでるから、また、明日な!」
ボクは走って、駐輪場に向う。
ホントに来てくれるだろうか?
自転車のペダルを勢いよく漕いで校門を出ると、夏の香りがした。
空は晴れ上がっている。
きっと、今日の夜空は天の川がキレイに見えるんだろう。
一旦家に帰って、制服から私服に着替えると、あの約束の場所を目指す。
七夕だけあって、地元の商店街は短冊の付いた笹や吹き流しが軒先に飾り付けてあって涼やかだ。
堤防に抜ける商店街の中央広場には、机の上に短冊とペンが置いてある。誰でも自由に願い事を短冊に書いて、笹に吊るせるようになっていた。
ボクは自転車を止め、その短冊に青いペンで書き込む。
────好美さんと会えますように。
本当に、彦星と織姫みたいだ。
ボクは願いを込めた短冊を、笹の一番上に吊るした。
そして、呼吸を整え、再び約束の場所を目指す。
堤防沿いを自転車で進むと、昨日、確認した通り、橋と交差する河川敷のスペースが見えてくる。
いるかな? 来てくれているかな?
心臓が高鳴りすぎて、苦しい。
好美さんのこと、本当に好きだったんだと、改めて思う。
あと少し。
河川敷に近付くにつれて、人がいるかどうかが見えてくる。
どうだろう……あと少しで、……。
あの場所が見えた!
いない?
何度も目をこすったり、凝らしたりして確認するが、……やっぱりいない。
ダメか。
もう、忘れたのかな。
橋のふもとに自転車を止め、ボクは河川敷に座り込んだ。
いや、遠いところに住んでいたら、高校の授業終わりにここへ来るには、ボクよりもずっと時間がかかる。
これから、来るかもしれない。
家から持ってきたトートバッグの中から、水とノート、シャープペンを取り出す。
ボクは出かける時に、必ずこの3点セットを持ち歩くようにしていた。
思い浮かんだ詞やフレーズを、すぐメモするためだ。
────忘れられない約束。tonight,so cool
詞(リリック)を書いて気持ちを落ち着かせようとする。
きっと、来る。
短冊にも書いたんだから。
ボクは待ち続けた。
そして、どのくらい時間が過ぎただろうか。
堤防の道を1台の車がやってきて、橋のふもとに停車した。
どうしてこんなところに、車が?
助手席のドアが開くと、女の子が降りた。そして車は女の子を置いて、走り去って行く。
まさか、……あの人……。
すっかり、大人っぽくなっていて、自信がないけど、……好美さんかな?
女の子はボクを不安げに見ながら、近付いてきた。
かわいい。
こんなにかわいかったっけ?
でも、面影はあるような。
声をかけたいけど、違っていたら恥ずかしいし、どうしよう。
「豊樹くん……?」
おそるおそる、女の子は声をかけてきた。
「はい。……好美さん?」
「そう!」
好美さんは、嬉しそうに笑う。いや、ボクも、だ。