死んだら楽になる。
 この世界に生きる理由なんてないし、希望もない。
 死んでもいいと思っている人たちがたくさんいる。
 だけど、生きていてほしい。
 生きてもらうために、これからを生きるために、誰かが犠牲にならなきゃならないこともある。
 その誰かが俺だった時、俺は何を思うだろう。
 その後、警察に捕まったとして何を言うだろう。
 五人のクラスメイトを殺し、彼女から逃げる俺は、息を切らしながらビルの屋上に向かう。

 彼女を守りたかったのかもしれない。
 彼女に生きていていいと思わせたかったのかもしれない。
 彼女の生きる邪魔をするやつがいない未来を作りたかったのかもしれない。

 あぁ、疲れた。もう十分だろう。
 人を殺しても、罪悪感を感じていない。
 これでよかったと思ってる。

 俺にも人を動かせる力があったんだと、ビルの屋上でナイフを手に持つ彼女に微笑みかけた。

「誰かがやらなきゃいけないと思った」

 こんな言葉が誰にも届かないことくらい、知っている。