声にならない声を胸の内にしまって、静かに朝のホームルームのチャイムがなるのを待った。




『それじゃあ、日直号令!』

 担任の若林の太い声が、教室に広がる。今日も、なんの変哲のない、普段通りの授業を終わらせ、帰りのホームルームの号令がかかる。

『起立!礼。さようなら』

号令と共に各々自由にする。同じ教室にいるのに、"あなたはいない存在だ"と、でも言うように私を避けて楽しそうに話し始める。

時々、私を見る生徒もいるが、コソコソと他の友達と話しながら嘲笑うかのように肩を震わせる。


……うるさいなあ。馬鹿みたい。

心の中でぼやく。私は、その子達にうるさいと言うように睨みつける。

そうすると、バツが悪そうに目を逸らして話し始める。そして、帰り支度を済ましカバンを持って教室を出ようとした。

「天野。天野はまだいるか?」

扉に手をかけた時、タイミングを見計らったかのように若林が舞憂を呼んだ。片腕には、1枚の紙が挟まれているバインダーが抱えられていた。


……またか。

私には、呼ばれた理由がわかってた。私に視線を向ける生徒は、何も分かっていないが、先生と舞憂にしか分からない。

「……はい。」
「いつもの場所に来てくれ。」

私は、気が向かないが教室を出た。廊下に出ると、外の部活の生徒たちが、学校内を走っていた。

私は、その流れに構わず図書室に向かう。