時代の移ろいと少しの衰えを感じさせるありふれた商店街があった。
その近くに、家族と住んでいる少女がいた。
どことなく儚い雰囲気を纏う少女だ。

少女は呆れ、落胆した。
父がカメラを落として壊したのだ。
今日は一緒に出かけるって言ったのに。
綺麗な景色が撮れる所に連れて行ってくれるって言ったのに。
ずっと楽しみにしてたのに。
なのに最初の目的地はカメラ屋になってしまった。
仕方がない。我慢しよう。
他でもない父と写真を撮りに行くのだから。

少女は写真が好きだった。
父に貰ったカメラが、父と一緒に撮った写真が好きだった。
心から純粋に、本当に大好きだった。
休日の静かな家。普通に見えた幸せな家族は、少女にとってはほんの少し歪だった。
カメラと床がぶつかる音を合図に、家族の穏やかな日常の歯車が狂い始める。

カメラ喫茶月宮。
この店に一組の父娘が入っていった。