マシな部類ではあるが、ボロい。
一応領主の屋敷だからデカイ、ただそれだけ。

ドラゴンの襲撃でもあれば一瞬で崩れ落ちそうだ。

「レン様、ドラゴンが来ようものなら、王国の建物でも一瞬で半壊しますよ」

うーん、けどここはSランクの魔物が蔓延っている森がすぐ側にあるんだろ? 今まで前例が無いとはいえ、魔物なんていつ襲ってくるか分かったものじゃない。

考えれば考えるほど不安になってくる。

ここは領主として何か対策を考えておかないとな。

トメリルが中も案内してくれたんだが、外見通り中は色んな部屋があり、紹介された中には不気味そうな部屋もあった。

幽霊とかいたりしてな、そんなわけないか、あはは。

「私が使用してた部屋しか掃除が行き届いてないので、明日にでも掃除させてもらいますね」

「いや大丈夫だ。自分でなんとかできるから」

「領主様の御手を煩わせる訳には……」

「そうですよ。それに掃除などはメイドの仕事ですよ!! 私にお任せください」

「しかしだな……」

俺的にはここまでだだっ広い屋敷だと、いくらメイドとはいえ疲れるだろうし、働かせすぎになると思うんだ。

ここはもう先手必勝で、明日にでも先にとあるものを作ってしまおう。

「私も手伝わせて頂きますからね! それでは今日はゆっくりとお休みになってください! 」

あれ? そういえばトメリルは何処に行こうとしてるんだ?

「へ? とりあえず今日は友達の部屋にでも泊まろうかと思ってたんですが」

「ならここの一室をトメリルの部屋にしないか? もちろんトメリルがよかったらの話だが……」

こんなあって一日も経っていない、信用に足りないような男とひとつ屋根の下で生活することになるのは嫌かもしれないが、一応提案してみる。

領主のいない間ずっと使ってきた我が家を、領主が来たから明け渡す。そんな事普通嫌だろう。

俺だったらそんなのごめんだ。

「い、いいんですか!? し、しかし対外的に見たら領主と同棲してる領民に見えてしまうというか、いや実際同棲ですし!? 皆がなんて言うか」

「元々トメリルの家みたいなもんなんだから誰も不思議には思わないと思うんだが……」

「そういう問題ではありませんよ。すいませんトメリルさん、レン様は天才ではありますが、こういう分野はからっきしなので。私が何回も…何回も……」

がくっ、と肩を落とし、ぶつぶつと何か小声で呟いている。

こういう分野ってなんだ? 俺なんか変なことでも言ってしまったのだろうか。

「リーナ様……く、苦労されてきたのですね」

「トメリルさんもこれから苦労することになりますね」

「えっ!? あっ、いやわ、私はまだ!? 」

「まだ、ですか。まぁいいです。これから同じ家に住む仲間通し仲良くしましょうね、もちろん別の意味でも仲間ですからね」

「敵では無いんですか? あれ、ごにょごにょ、ライバルというか」

「その点は心配ないですよ。なぜなら」

「なぜなら……? 」

リーナがこちらを向き、それに合わせてトメリルも僕の方に向き直る。な、なんだ。これから何が起きるっていうんだ。

「レン様、レン様の夢を今一度お聞かせください」

なんで俺の夢? ま、いっか。

「ここヘレクス領を世界一の領地にして、ぐーたら過ごすこと! 」

「あら? それは今決めた夢が加わってますよね? 」

む、むぅ。流石専属メイド。トメリルの手前、少しかっこつけた事がバレてしまった。けどこれも本当の夢だからな。

「俺の錬金術で何もかも全自動にして、寝っ転がったまま神になりてぇ! 」

「それも言ってましたが、なによりの夢を仰ってませんよね? 」

「え? そ、ソンナコトナイヨー」

「レ・ン・様・? トメリルさんが居るからカッコつけてるのかもしれませんが、今言ってきた夢だけでも全部かっこよくないですからね? 」

そ、そそそそそんなことあるはずないだろ!?
ぐーたら領主、実は世界最強。とかいいじゃん!?
全人類(男)の夢みたいなもんだろ!!

タイトルに起こしてみるぜ?

「ぐーたら領主、実は世界最強〜王国から左遷された錬金術師だけど、楽に生きたい一心で錬金術フル活用して、魔道具作ったり魔法自作したりしてたら、世界一の領地が出来上がっていた。今更戻ってこいと言われてももう遅い〜」

くーっ!! めっちゃ読んでみたいだろ!?

「あの、申し上げにくいのですがネタバレしちゃってますよ」

「これからそうなっていく作品なのに」

「メタいよ!? ストーリーをタイトル化しちゃった俺が言えたことじゃないかもしれないけど、メタいよ!? 普通、この人何言ってるんだ? って流すとこだぞ!? 」

「ではメタい話はあまりしない方向にします」

もう終わり!! 解散!!

「それで逃げれたとでも? ちゃんと夢、答えてください」

「気になるので教えて欲しいです!!」

「しゃーねぇなー」

トメリルに言ったらドン引きされそうだから辞めておいたのに……。もうどうなっても知ったこっちゃない。

「ハーレムを作ってぐーたらしてても褒められる最高な生活がしたい…… 」

あぁ……終わった。せっかく少しでも信用してくれてただろうに。こんな事聞かされたら絶望だろう。
トメリルの反応は思っていたのと全然違った。

「そうですか……なら安心しました!! 」

むしろとびっきりの笑顔だった。

「だから最初から言っていたでしょう。それでは今日はここら辺にして寝ましょうか」

「え、ちょ、なんでアレ聞いて安心するの」

そう聞こうとしたがリーナはトメリルを連れて、さっさと出ていってしまった。

ぽつんと一人取り残された俺はこう呟いたのであった。

「明日から頑張ろ……ぐーたら生活のためにも」

ベットにダイブする。

はぁ〜今日は色んなことがあって疲れた。

今日は安眠魔道具を使わなくても、ぐっすり寝れそうだ。