クレ二に告られたことをのぞけばいつも通りの、すっきりとした朝。

寝坊組2名が、朝食の時間に席に着いていたことに驚く皆。

「あのねぼすけさんなお二人がちゃんと起きてるなんて偉いです! やっぱり起きれた理由って、レン様が昨日作ったと仰っていたあれのおかげですか? 」

と、トゥーンちゃん。

その問いに首を縦に振り頷くねぼすけさんことクレ二&レミナの二人。

「ちょっと、あたしまでねぼすけ判定されるのは違うでしよ。昨日はたまたまよ! たまたま」

「たまたまですか。それはごめんなさいです! けどレミナさまはたまたまじゃないですよね? 」

「そーだな。ほんとはこの時間はまだ寝てたいよ。まだ早朝だ早朝」

「起きれてるのすごいです! 」

「あれは幾ら深い眠りについていようが、幸せな夢を見ていようが、時間が来たら問答無用で叩き起してくる拷問器具みたいなもんだ……」

ゲンナリとした様子でそう言うレミナ。
拷問器具て……まぁ、俺は使ってないからわからんのだがな、わはは。

「レンが寝てる時にやってやるから覚悟しろ」

「やめろよ!? 」

「私も一つ貰っていいですか? 」

「私も欲しいです! 」

「レンが作ったものなら……欲しい」

「もちろんわたしも欲しいです! 」

「ここでマーリンだけ貰わなかったら、他のみんなより一歩遅れてるみたいで嫌だからもらおうかしら〜」

リーナの言葉を皮切りに他のみんなも次々と言ってきた。

「じゃあ後で皆の部屋に行って1個ずつ渡していくよ」

「ありがとうございます」

こうして今日も一日が始まった。

まずは誰の部屋から行こう?

リーナはまだ食堂に居るだろうし、トメリルは洗濯物。真っ先に部屋に戻ってそうなのはトルン、レミナ辺りだがレミナにはもう渡しているから行く必要はない。

それにレミナはいつも朝食の時間眠そうにしてるから、食べ終わったら速攻部屋に戻って二度寝を始めているだろう。おそらく早くても昼までは寝ているはずだ。王都にいたころも、レミナのとこに遊びに行く時は基本夜からだった。

けどそれでも最近昼には起きていて、誰かしらと話していたり遊んであるのを見かける。

レミナなりに昼夜逆転生活を治そうと頑張っているのかもしれない。

夜は皆寝ているから、それが寂しいのかも。
そう考えた俺は、今日の夜もしレミナが起きていたら、部屋に行ってみようと思った。


マーリンは朝食を食べたあと、必ず朝の散歩に出かけている。王都にいた時から習慣づいているらしい。

俺はどっちかというとレミナよりの思考をした人間のため、わざわざ暑っつい中、飯食って直ぐに運動をしようなんて思わない。

本人曰く「健康に気を使うのが一流の人間の証拠よ」との事だが、俺は一流の人間になろうとなんて思わない。

厳しいって、とお叱りをうけそうだが、お生憎様俺はそういう人間だ。

散歩から帰ってきた頃合に部屋に行くとしよう。


となると、今部屋にいる確率が高いのはトルン&トゥーンちゃんコンビとなる。

二人は基本一緒に居るので、双子みがあって可愛い。
しかしそれをトゥーンちゃんに言うと、トルン様に恐れ多いと怒られる。

トルンはトゥーンちゃんのことを信頼してるみたいだし、いいと思ったんだが、どうもトゥーンちゃん的には、どうしても2人の関係に一つの板を敷いてしまってるみたいだ。

どうにか取り除いて上げたいって気持ちもあるけど、部外者の俺がずさずさ踏み込んでいくことじゃないのかもしれない。

もしトルンと二人きりで話せる時間があれば、トゥーンちゃんをどう思っているのか聞いてみて、その返答次第で考えてみようかな。


二人の部屋をノックすると、トゥーンちゃんが開けてくれた。

「作ってくれたんですか! わぁ〜! ありがとうございます!! これってわたし達の髪色に合わせて色変えてくれたんですか? 」

そう、全員同じ色でもよかったけど、どうせならそれぞれのモチーフ色にでもしたら区別がついていいかなと思い色を付けてみたのだ。

トメリルとトゥーンちゃんの髪色は同じだが、この二人であれば混ざることもないだろうし。

トルンとしか寝ないしね、この子。
ちなみにトルンは俺の銀髪より少しうっすらとした銀色。

何故か銀髪率が少し高く、この屋敷だけで三人銀髪がいる。

皆は染めたりしないだろうけど、俺はそろそろ染めたいと思ってる。よく地毛なのかと聞かれて、驚かれる。

染めるとしたら地毛の銀も残したまま部分的に染めたい。そうなると必然的に二色マンになるわけだが。

「ねぇ、俺って何色が似合う? 銀以外で」

「突然ですね。うーん……黒、ですかね? トルン様はどうですか? 」

「ん、トゥーンの言う通り銀以外で答えるなら黒」

二人とも黒を推してきた。銀と黒のイメージを脳内に浮かび上がらせる。

うん、確かにかっこいいな!

「ありがとう二人とも! 」

「どうして急にそんなことを? 」

そう言って、ハッとなるトゥーンちゃん。
そしてあわあわとしだす。

「まさかご自身にも目覚まし時計作られるおつもりなんですか!? だめですよーーー!? 」

「ん? いや違うけど。なんでー? 」

自分で作っておいてなんだが、あんなやかましいもの俺は使わない。朝というのは気持ちよく迎えるものだ。一日の始まりをあんなクソデカピー音によって阻害されるなどあってはならない。

そんなものを渡すなとつっこまれそうだが、みんな側から欲しいとの要望があったから渡していってるだけだからな。

クレ二の一件で音量見直しを行ったから、屋敷中に響き渡るような音量ではなくなったので、各々の部屋から目覚まし時計大合唱が始まり、俺が無理やり起こされるなんてことはないだろう。

トゥーンちゃんは恥ずかしそうに言う。

「えっと……その、ただでさえ三日に一度しか起こしに行けないのに、それが無くなっちゃうのはいやだな、って……」

「トゥーン。いつも前日の夜ウキウキしてる。起こしてへやにもどったあと、嬉しそうにそれを話す」

「あっ!? ちょっとトルン様あああ!!! 本人の前で言わないでくださいよ!!!! 恥ずかしいですうううう……」


なんかいっつも恥ずかしがってるなと思いながら、二人を微笑ましく見守るのだった。