「そ、そそそそそそそののののののの、やっぱ今のは……」

「勇気をだして言ってくれてありがとう。いやまぁ、実はさっきのも聞こえてたんだけど」

それを聞いてわなわなと震え出すクレ二。

「1回目のもすっごく勇気だしていったんだけど!? 」

「初手捧げる云々はビビるでしょ」

「あたしなりに頑張ったらああなったのよ。別に困ることじゃないでしょ。乙女に自分を捧げます、だなんて言われても」

「反応に困る」

「けど、まんざらでもないんじゃない? 」

それに俺はうーん、と唸る。
捧げるとかってなんかこう、スケールがデカくない?

というか答えどうしよう。
クレ二はあの時から思いを馳せていてくれたみたいだが、俺からしたら会って数日みたいなもんだし。

出会って数日の女を自分の屋敷に連れ込んでいるこの状況はなんなんだと突っ込まれたら返す言葉もない。

「考えてくれてて嬉しいんだけど、あれよ? これ別に今すぐ答え出してくれってことじゃないからね。好きな時に返事聞かせてくれたらいいわよ」

「それでいいの? 俺としては助かるけど。変に返事待たされてクレ二は嫌じゃないのか? 」

「別に嫌じゃないわよ。急にこんなこと言ったのは、焦りからきたのもあるけど、マーリンが背中を押してくれたから出来たってのもあるからね」

「そうか……返事、ほんとにいつになるか俺自身分からないから、それだけは先に謝っておくよ」

マーリンはあそこでも皆のお姉さん的なポジションでもあったが、ここでもそれは健在なよう。

「あとレン君を独り占めしようだなんて考えてないからね! それも踏まえた上で返事、いつでも待ってるからね」

独り占め……? どういうことだろう。

「それはあたしからは言えないわよ。これでこの話はおしまい! 汗かいてるのに玄関で長々と話しちゃってごめんね。お風呂入りましょ! 洗ってあげるわよ」

あ、風呂はちゃんと予定通り入るのね。こんな話したあとに二人きりで入れるなんて、クレ二は意外と鋼メンタルなのだろうか。

「意外ってなによ!!! 」

クレ二が抗議してきたが、その口は少しにやけていた。

俺としても身体を洗ってやると言われて拒む理由はない。それに外での作業で疲れたのもあって、面倒な作業を他人がやってくれるってのはありがたいことだと思い、今日はクレ二と朝風呂ならぬ昼風呂につかったのだった。

危惧していたような、気まづさや沈黙なんてものはなく、ここでの話や、王都や、ここに来るまでの道中の話などを話してくれて、楽しく過ごせた。