皆と混浴した次の日の朝。
いつも通り起こされて、朝食を食べに向かう。基本リーナかトメリルのどちらかが起こしに来ていたのだが、今日は謎にトゥーンちゃんだった。

起こす時の優しさ度を言ったら、

トゥーンちゃん〉〉〉〉〉〉〉〉トメリル〉〉リーナみたいな?

所謂(いわゆる)絶対に越えられない壁。

いや、まじでそのくらいトゥーンちゃんが優しかった。30分くらい追加で寝かせてくれたのだ。

人間、そうやって甘やかされると。

「あと30分寝たらだめ? 」

こうなる。

「うぅん……わたしとしてはいつまでも寝かせてあげたいんですが、多分他の皆さんもう席に着いてると思いますし、これ以上待たせる訳にもいかなくて……。あっ! 今日も朝ごはん食べてお仕事頑張ったら、ちょっとしたことしてあげますね! だから起きましょ! 」

「いやいや。皆席に着いてるって、あのレミナがこんな朝早くから起きてるわけないだろ」

昨日起きてたのは意外だったが、それはお風呂があったから? いや、レミナは俺と同じでシャワー派の人間だったはずだ。もっとも、昨日のあれでお風呂が寿司になったと言っていたみたいだが。

そんなことをいいつつも、身体を起こし着替えをして、洗面所に向かう。

レバーを捻って【冷たい方】から【暖かい方】に切り替えて、顔を洗う。

昨日のシャワーで付けた機能だが、洗面所にもあったら便利かなと思い付けた。

これはお好みで好きな方をどうぞって感じかな。
夏は冷たく、冬は暖かく出来ていいかも。

そして死の駆動に行くと、やっぱりレミナは居なかった。なんならクレニも居ない。

「あの二人は? 」

「レミナは当然寝てるわよ〜。意外だったのがクレニちゃんもぐっすり眠ってて、起こそうとしてもうんともすんとも言わないのよ」

「なんか意外。聖女って規則正しい生活送ってるもんだと勝手に思ってた」

「新しい土地だし、まだここに来て3日目だから疲れも取れてないのかもね〜」

「それを言ったらマーリンだって三日目だろ? 」

「賢者だし体力には自信あるわよ〜。早起きの習慣も身体に染み付いちゃってるのもあるかも〜」

「健康賢者なのは相変わらずで安心したわ……って君らまじで律儀に松の? 」

30分も遅れてやってきた人の発言とは到底思えない言い草だが、誰も食事に手をつけてなかったので思わず言ってしまった。

「一応そういう了解? になっているので」

「じゃああいつら呼んでくるわ」

食堂を一旦後にして、あいつらの部屋に向かう。
まずは楽に起こせそうなクレニから。

ノックしても当然反応はないので、部屋の中に入る。

凄い寝相をした聖女が目に入った。
ベットから頭は出てるし、布団は蹴り飛ばされているし、服はめくれておヘソがチラ見してる。あとヨダレが垂れている。

「おーい起きろー」

身体を揺さぶってみるが中々起きない。

どうしたものかと頭を悩ませる。

あ、そうだ。こういう時こそ返金術の出番だな。

ベットの隅っこに置けるような小さめのサイズにして、時計を埋め込んで、設定した時間になると、大音量で音がなるようにして……っと。

ちょちょいのちょいっと数分で完成した。
これは【目覚まし時計君】とでも名付けよう。

試しに1分後に設定して、スイッチをon。
クレニの耳元にそっと置く。

そして待つこと1分。

ピピピピヒピピピピピピピピヒピピピピピピ!!!!!

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!?????? な、なに!? 」

魔物みたいな声を上げながら飛び起きたクレニが、滝のような汗を流しながら、首をブンブンふりながら部屋中を見渡す。

「へ? レン君。どうしたの」

ピピピピヒピピピピピピ!!!!!

「やかましいわね!!!! どこから鳴ってるのよ!! 」

クレニはそう言って、視線を落とす。そしてようやく【目覚まし時計君】を見つける。

「これね!? どこ押せばいいのよこれぇぇ!! 耳が死ぬわよ」

「その頭の部分のとこ」

こうしてようやく音が消えた。

「れ、レン君よねこれ作ったの……あたしのために作ってくれたのはこの次農協を見たら分かるんだけど、流石にうるさすぎるわよコレ」

「ごめんそれ俺も思った」

鳴り響くピー音を聴きながら思ったのだ。
あっ、これ音量設定ミスったわって。

だって……

「おい聖女!! お前の部屋からとんでもない音してたけど無事か」

あの寝坊助で、頭を叩こうとも、頬をペチペチしようとも絶対に起きない鉄壁の昼夜逆転女であるレミナが血相変えて飛び起きてきたくらいだからだ。

「あ、レン? なんでレンがクレニの部屋に……朝から……朝から、ぷぷっ」

「ちょっとレミナ!? あんた勘違いしてない!!? ねぇ! 」

「やべ、逃げろ! 」

こうして二人とも部屋を出ていく。後ろから声をかけておく。

「皆待ってるから顔洗ったら食堂いけよー」

「わかったわ」

「あいよー」

走り去っていく二人の後ろ姿を見送り、俺はベットの上にある【目覚まし時計君】を持ち上げた。


これ、音量のとこ変えないとなぁ……。

一回分解して、程よい音量に変えたあと、俺も急いで食堂に向かったのだった。