「あっレンさま! おかえりなさい! 」

広場(仮)なんならただ開けてただけの場所から【気配】を消してすたこらさっさと屋敷に帰ってきた俺。

出迎えてくれたのはトゥーンちゃん。
いつも思うんだが、この子はトルンの傍付きなだけであって、俺に敬意を払う必要はこれっぽっちもないはずなんだけど、何故かリーナと一緒に身の回りの世話とかしてくれるし、メイドとして仕事もしてくれている。

これ、今までのお小遣いじゃもう足りないよな。

「お疲れですね。そういえば何やら外が騒がしかったですけど、また何かやったんですか? あっ、外に出た服のまま床に寝っ転がらないでください! てか床で寝ないでくださいー!! 疲れてるならいいですけど」

先にクレニたちが来ること伝えておくか?
いや、サプライズ? になるかは分からんが、内緒にしておくか。

「ちょっと色々あってね……」

「(うぅ……今だったらリーナ様も斗メリル様もいらっしゃらないし、あれを言ってみるチャンス!! け、けどやっぱ恥ずかしいよぉ……!! )」

もぞもぞしながら悶々としている。なんか語呂いいね今の言葉。

限界まで顔を真っ赤にしたトゥーンちゃんを見て俺は焦る。

「ちょ、大丈夫か!? 尋常じゃないほど顔赤くなってるけど、熱があるんじゃ……」

即座に起き上がって、トゥーンちゃんのそばにかけより、おでこに手を当てる。ほんのり暖かいけど、大熱という程でも無さそうだ。微熱はもしかしたらあるかも? レベル。

しかし、手を当てた瞬間更に顔が赤くなった。目の商店も合わなくて、どこか虚ろとした表情になる。

流石にただ事ではない。
俺は【アイテムボックス】から俺お手製【熱下げさげシート】を取り出した!

こいつは俺の中でも傑作の1つで、数時間冷たさが保たれて、おでこに貼ることによって、熱を下げることもできるし、辛さや苦しさも軽減できる神アイテムだ。

体調を崩したメイドさんや、夏の暑さで参っていた騎士団の皆に配ったらそれはそれは大好評の嵐で、騎士団長に抱きつかれたくらいだ。

金属の鎧が超至近距離で身体に打ち付けられた俺は、腹部に熱サゲサゲシートを複数枚貼る羽目になったのだが、それはうん……。自分でも効果を実感できたってことでいいだろう。

ちなみに皆はもうお察しだと思うが、クソ親父や兄貴が熱出した時にも上げたんだけど、捨てられたよ!!!

もう一生あいつらにはやんねーよ!!!!

ワシはこれほど苦しんでいるのに、そんなチンケなモノを貼って、効果がたった数時間だと!? ふざけるな、作るならお前が熱を肩代わりできるようなモノを作れ、だなんて言われたんだぜ?

サンドバックじゃないんだから俺は……。

てかこう考えると酷い目に会いすぎだろ。

おっと、そんな場合じゃなかった。
表面(冷たい方)を覆っているピリピリを破くと、トゥーンちゃんのおでこにゆっくり貼り付けて、優しくさすった。

「ひゃっ……!? ちめた」

ははっ、そうだよなー。最初貼る時めっちゃ冷たくてドキってするよな。皆同じ反応してたな……とまた懐かしむ。

どうか元気にやっていて欲しい。騎士団たちも心配だ。兄貴にパワハラされてないか。ちゃんと休みを貰えているか。

この国の上層部は俺が言っちゃなんだが腐ってるかもしれないからな。

いや、俺が嫌いなだけか。厄介者の出来損ないの王国の恥の……ええっと他なんて言われたっけ。……そんな俺を左遷できて、最高に気分がハイになって意外と上手くやってるかもしれない。

聖女と賢者に逃げられたのはざまぁないけどね。

「最初は超冷たく感じるだろうけど、少ししたら慣れるからね。っと、ちょっとごめんよ」

トゥーンちゃんをお姫様抱っこする。

「へ? (ふぇ……!? ちょっとレンさま何してるの!? え、私今レンさまにお姫様抱っこされてるよね!?!? リーナ様やトメリル様、はたまたトルン様まで差し置いて私お姫様抱っこされちゃってるよ!? 恥ずかしさでぶっ倒れて、お恥ずかしいところ見せちゃったけど、こんなご褒美貰えちゃうなんて……しかもおでこに手をあててくださったし、撫でてくださったしぃぃぃぃ!!! やばい、私しぬ!!!! 目瞑っちゃってるけど、お姫様抱っこしてるってことはすぐ近くにレンさまのお顔があるってことだよね。ちょっと見ちゃお。わぁぁぁぁぁぁ!!!! 思ってたよりも近すぎてだめだよ!! これ私が事故装って少し顔を前にするだけで唇つけれちゃうよ!!!!!!れ????? やっちゃう!?!? けどそれがバレたら後が怖いぃぃぃぃ!!! もう一回だけ目開けてみて行けそうだったら、してみちゃおうかな……えい! って……さっきより近いよ!!?!!!?

あっ

もうだめ意識飛ぶ……)」


一瞬目を開けたと思ったら、その後すぐに寝てしまった。

トルンとトゥーンちゃんの寝室に連れていき、ベットに寝かせる。

トルンも心配そうにしていたが、微熱っぽいし大丈夫そうだよと伝えたらほっとしていた。

そうは言っても心配だし、夜中に急に体調が悪化したら大変なので、トルンに【いつでも呼び出しボタン(1回きり)】を渡しておいた。

ボタンを押すと問答無用で俺がその場に転移させられるアイテムだ。作ってから一度も試したことがないので実際に使えるか分からないし、使う機会もなかったが調度良いだろう。

トゥーンちゃんの頭を優しく撫でると、後はトルンに看病を任せて部屋を後にした。