三人を連れて帰ってくると、入口付近に領民が沢山集まっていた。どうやら外を散歩したのがバレたらしい?

しかしそれよりも、俺の隣に居る面々を見た瞬間、ざわめきが大きくなった。

「領主様の隣にいる方って、聖女様と賢者様じゃ……? 」

「本当に!? 」

「ああ、間違いない。だってこの新聞見てみろ。お二方と顔そっくりじゃないか」

「本当だ! 」

「その隣の方は見たことないが、聖女様方と一緒に居るくらいだ。相当な方だろう」

「そういえばデスウルフが現れた時に、レン様がお話してくださったわよね」

「そうだったな。領主様は一度しか会ってないと仰っていたが、あそこまで聖女様がくっついているとなると……」

「聖女様までも、領収様にゾッコンという訳だ」

「あんな幸せそうな顔をしているし、間違いなさそうね」

領民たちは次々に言う。

話題が話題を呼び、ものの数分で領民が大集結するほどの騒ぎとなった。
領地の入口から中央まで移動して、事の経緯を説明する。

「と、言うことがあったんだ。これから聖女と賢者とニートがヘレクス領の仲間となる。皆仲良くしてやってくれ」

領民たち全員「は? 」ってなっている。
おかしい、俺は何か変なことを言っただろうか。ああ、なんでニートを連れてきたんだと思われているのか。

「ニートとはいったがレミナは研究に長けているから、領地発展の力になってくれるはずだ」

それでもまだきょとんとしている。

「あの、みなさん? 」

少しの静寂の後……

「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 」

「聖女様と賢者様をこんなへっぽこ領地に引き込んだとか、領主様凄すぎだろ!!!!! 」

「レン様が就任されただけでもかなり活気が出たものだが、それ以上に凄いことになるぞ!! 」

「国王よりも人望厚いなんて、うちの領主様バンザイ! 」

「ますますなんで国王は領主様を左遷したのか判断に苦しむ」

「まぁいいじゃない。そのおかげでレン様と出会えたんだし」

大盛況&大絶賛の状況になった。
なんか一人凄いこと言ってたな。

「国王より人望が厚いなんてことはないと思うよ? 」

もしそうなら国家経営なんてやれてないだろうし。
今までの積み重ねで国王なんて重大な役割を果たしているんだろうし。

「人望が厚くなければ、王都での暮らしを捨ててまで聖女様方はこないかと」

俺は何故か聖女のクレニちゃんと、賢者のマーリンに好かれているようだけど、なんで二人は俺にここまで拘ってくれるんだろう。

特にクレニちゃんなんて1回しか会ったことないのに。知らない数日の間に何かあったのだろうか。

ありがたいことだし、嬉しいけどね。
人望云々は置いておいて。

「けど一応皆の意見も聞いておきたい。俺を頼ってくれたから、いや友達として三人とも受け入れたいんだけど反対の人はいる? 」

「「「いや、いる訳ないですよ!! 聖女様や賢者様を拒む理由なんてないです」」」

おー満場一致。

「いや、実質的な関わりはないとしても王都の人間だったわけだし、あまりよく思わない人もいるかもしれないって思ってな」

「領主様に出会う前であればそうだったかも知れません。ですが、王都にも領主様みたいな素敵な方だって居るんだって分かりました」

「レン様の今までのお知り合いは全員良い人でしたし。最近大精霊様はお見受けしませんが……」

トルンは部屋に籠って俺みたいにグータラ生活を満喫してるけど、本人の名誉の為にも言わないでおこう。

皆がここまで俺を信用してくれてることを知って驚いている。それと同時に嬉しさが込み上げてきた。

涙も出てきそうになったが、そこはなんとかこらえる。
流石に体臭の前で泣くのは恥ずかしい。

「そんなわけで今日からこれまでより一層栄えるだろうし、今日の出来事を記念して明日はここに広場を作ろう」

そう宣言するとまた拍手喝采となり盛り上がった。

「せっかくこんなに集まったんだし、自己紹介しておいてもらおうか」

そう言うと、領民たちの注目が三人に集まる。

「えぇっと、元聖女でこれからヘレクス領の聖女になるクレニール・スアントルよ。これから仲良くしてくれると嬉しいわ。怪我とかしたらあたしのとこに来てね、直ぐ治してあげるから! 」

「わぁぁぁぁ!!! 」

「聖女様可愛すぎだろ!!!!!毎日怪我してぇ!!! 」

「バカっ!!!! 聖女様は領主様のものだろ」

「ま、まだ希望は捨てちゃいない。ワンチャンあるかもしれねぇだろ、毎日通い続けることで、この人の怪我が愛おしくなってきちゃった……♡ キズのとこ痛いでしょ? あたしが治してあげる♡ ってペロリとしてくれる……そんな展開が俺にはぁぁぁぁ!!!! 」

「お前領主様に消されないようにな」


「マーリンです〜賢者として皆様のお役に立てるように頑張ります〜」

「わぁぁぁぁぁ!!!! 」

「……うへへ。すげぇ美人。手とり足とり魔法を教えてもらうんだ、うへへ」


「どうもニートニート言われているレミナだ。こいつらと違って有名でもなんでもないけど、まぁよろしく頼む。ほんとになんでこいつらは俺様とつるんでるんだ。成り行きとはいえ、メンツが濃すぎて俺様がカスに見えるじゃねぇか」

「わぁぁぁぁぁ!!! 」

「あの見た目と声とは裏腹に名前が可愛すぎる!? 」

「俺!!!!! ああいいひと大好き!!!!!! 」


歓声に混じって各々何人か、不埒な発言が聞こえた気がするが、俺は知ったこっちゃない。

そばに居たリーナに適当に任せて、俺はスタコラサッサと屋敷に戻ったのだった。