ヘレクス領の領主に就任して数日。
少しづつ領主の仕事にも慣れてきたし、領民とも良い関係を築き始めれている。

凄く順調だ。これは早くもぐーたら生活を実現出来るかもしれない!

「今日の仕事は何があるかね……と」

錬金術で作った座り心地の良い椅子に座って、いざ仕事モード。ここに座ると、何がなんでも仕事をする。そんな悪魔みたいな椅子になってしまった。俺はただだらけて過ごしたいだけなのに。

リーナとトメリルが作った領主のスケジュール表に目を通す。

今日の予定は領地の見回りです

「え、今日もそれだけ? 」

そうなのだ。ここに来てから数日間はたったが、これまでしてしたことと言えば、Cランクの魔物の討伐くらいだけである。後の仕事は見回りだけ。

そして左に目線をずらす。
まぁ、こいつに目を通すって仕事もあるんだが、これに関しては二人がまとめあげた書類の最終確認をするだけ。

実質ぐーたらしているようなものである。

だらけたい俺に取って好都合な話だが、流石に不安が残ってしまう。けど二人になんか仕事は無いかと聞いても、無いって帰ってくるからなー。

なんか問題でも飛び込んでこないかね。
あ、あまり労力使うのはナシで。

そんなことを考えてながら、窓から領地をのぞく。
何やら入口の方が騒がしい。

「あれ? なんかデジャブ」

まーいいや、行ってみよっと。

そしてその場に着くなり俺は驚愕した。

だって領民たちに囲まれていた二人の少女は俺がよく知っていた人物だったから。

「トルン!! それにトゥーンちゃんも!?ど、どうしてここに 」

「レンがここにいるから? 」

「私はついてきただけですけど……私もあんな場所にいるよりレン様と同じ場所に居たいです」

「俺がここにいるからって……」

わ、わからん……。目の前にいるこのちっこいロリ少女は本の大精霊だ。そんな大精霊が、世界中を見ても最大級の図書館を捨ててまで、俺のところに来るだなんて。

「ほ、他にも理由あるよね? 」

流石に俺目当てだけでこんなとこまで来るはずない。

「ない。あとあそこの本全部読んだし、いる意味無い。だから来た」

俺目当てだけだった。

どうしたらいいんだこれ……王国攻め込んできたりしないよね……?大精霊を誑かした犯罪者だ!!とか。

あの人たちならやりかねないんですけど……。
っと、そんな事を考えていても仕方がないか。

「私は多分こうなるだろうなーって予想してたので! じゃなければ無理やりにでもトルンさんと合わせてましたよ。国王なんかより、よっぽどレン様に助けられてきましたので。それに私言ったはずですよ? すぐに会いに行きますって! 」

「確かに言ってたな」

こんな直ぐに会うことになるとは思ってもなかったが。
あんな今生の別れみたいなシーンだったのに、数日ぽっちで再会を果たしてしまうとは。

「ここ、本なんて数える程しかないけど、本の大精霊として大丈夫なのか? 」

「うん」

二つ返事で即返された。本人が良いって言ってるならいいか。本の大精霊とは?って感じだが。

「じゃあとりあえずは俺の屋敷に住んでもらうことになるがそれでいいか? 」

「とりあえずじゃなくてずっとそれでいい」

「同感です」

即答する二人。
まぁ他に住める家は現状ないし仕方ないか。

「じゃあ屋敷の案内するよ」

俺はそう言うとこの場は解散となり、領民たちは仕事なり世間話なりへと戻って行った。




「ーーーとまぁ、それなりに部屋はあるから好きなとこ使ってくれ」

ひとしきり二人に部屋の案内を終えた。
ぶっちゃけ案内する部屋が少なすぎるが。まだ最低限の部屋当てしかしてないからな。

「あれ、お客さんですか? 」

トメリルが声をかけてきた。

「うーん、お客……というよりはそれ以上の位の人間? 」

「それ以上の位の人間……て、どゆことです? 」

首を傾げてきょとんとした様子のトメリル。

トルンに言っていいか?との意味を込めて目配せをする。
こくりと頷いたので、説明することにする。

「実はこの子大精霊……なんだぜ? 」

「大精霊ですか……ダイセイレイ……ダイセイレー!?!? この子……いやこの方が!? 」

あー…そりゃそうか。普通この反応になるか。傍から見たらただの銀髪ロリっ子。よくよくみたら尋常じゃ無いほど綺麗で透き通った銀髪だから怪しさはプンプンだけど。

「ん、図書館の大精霊」

「ここ図書館はおろかまとまった本すらまともに無いですよ!? 」

「大丈夫」

「それって図書館の精霊としてセーフなんですか!?!? 」

「セーフ」

「というかどうしてこんな領地に? レン様といい図書の大精霊様といい、何故立て続けにこんな場所に……」

「そこに」

「そこに? 」

「そこにレンガいるから」

「ははぁーー……大精霊様はレン様を追ってこんな場所までやってきたんですか。レン様ほんと慕われてたんですね」

「そういうのはあっち(王国)から何人も来てからいえやい! 」

普通にトルンとトゥーンちゃんが俺を追ってきたのは予想外だったが、流石にもうこれ以上は誰も来ないだろう。

うん、だって俺人望ねーし。

慕われてたなんて言ってくれるのは嬉しいけど、これっぽっちも慕われてなかったと思う。

「またまたそんなこと言ってー! あんなにレン様のことを想っているリーナさんに加えて、大精霊様とそのお付きまで貴方を追ってやってきたんですよ? これはもう王国の色ーんな方が来そうですよ!! みんなに伝えておかなくっちゃ! お先に失礼しまーす! 」

「あ、おい、ちょっとー!? そんなこと絶対ありえないからねーーー!? 」

俺の絶叫がこだました。

こうして就任数日にして、領民が二人も増えたのだった。