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 食材の補充と、種を買いにメルリアと農村に来た。ありがちな、シーンにこんな田舎町で遭遇するとは思わなかったが。小柄な女の子が、冒険者に追いかけ回されていた。

 そこにら俺が運よく登場し、ぶつかってしまったというわけだ。メルリアが疑い深そうにこっちを見てるが、俺からぶつかりに行ってないのは、見てたくせに。

「大丈夫か?」

 問い掛ければ、女の子は俺の後ろにスッと隠れる。冒険者らしき男は、俺をじっと睨んでから、鼻で笑った。そこまで、ありがちかよ。

「邪魔すんなヒョロいくせに」
「魔法使いなもんで」
「魔法使い様がこんな村に、何のようですかねぇ」

 ポキ、パキッと指を鳴らしながら近づいてくる。後ろに隠れた女の子を振り返りながら、追いかけられていた理由を問いかけてみた。

「なんで追いかけられてたんだ?」
「武器を作れってしつこいんです、その人。私は、人を傷つけるものは作りたくないのに」
「村唯一の鍛冶屋が何言ってんだよ! そして、魔法使い様には関係ないだろ、どけ」

 睨みを効かせるが、よっぽどモンスターの方が強いし、リースの方がガタイも良かった。はぁっとため息混じりに、水球を浮かべる。小さい水球をぶつければ、「つめてっ」と声をあげた。

「そこまでにしないと……」
「こんなんで何ができんだよ」

 窒息させることとか? いや、答える義務はないんだけど。めんどくさいな。

「スローライフしに来た、だけなのに」

 ぽつりと呟きながら炎の塊に変えれば、相手は少しだけ怯む。ジリジリと火球を近づければ、後ずさってくれる。

「そこまでにしような?」
「……覚えておけよ」

 戦闘にならなかったことに安堵していれば、いつのまにかメルリアが隣に立っていた。後ろに隠れていた女の子は、メルリアと俺を見比べてから、「あっ!」と声をあげる。

「ありがとうございました! お礼、お礼、あの、鶏とか、どうですか!」
「へ?」
「スローライフっておっしゃってたので、そういうの探しに来たのかなって」

 随分と察しのいい少女だ。俺の代わりにメルリアがうんうんと頷く。

「あと、種と食材を買いに来たんです」
「じゃあ、案内しますよ! 私のうちなので」
「鍛冶屋なのに?」
「何でも屋です。お店そんなに無いですから」

 あぁ、ありがち! 想像通りのスローライフって感じだ! 少女の後を追いかければ、「SHOP」と書かれた看板を掲げた建物にたどり着く。窓から覗き込んだ感じ、想像通りの店だ。

「ここです! 鶏は、帰る時にお渡ししますよ、欲しいものがあったら行ってください!」

 お店の中に入れば、メルリアは目をキラキラと輝かせる。日用品とかの買い出しでも、楽しいらしい。

「わーどれにしましょうー!」
「好きなの選んでくれ。俺は種を選んでくる」

 キョロキョロといろんなものに目移りするメルリアを置いていけば、先ほどの少女が種の説明をしてくれた。

「これは、カブで、こっちはイモ。あとは、キャベツですね。今の時期は」
「ちなみに、果樹の種とかもあるか?」

 見える範囲には無いので、尋ねてみれば、少女は一瞬悩んだ。

「あるにはありますけど、結構昔から置いてるやつなのでちゃんと芽が出るかどうか……あ、じゃあこれも差し上げます! 引越し祝いってことで! 芽が出なかったらごめんなさい」

 どんっと、袋に入った種を手に乗せられる。遠慮しようかと思えば、少女は首を横に振った。

「ちゃんとした商品じゃないので、売れないんです」

 それもそうかと、ありがたく貰ってストレージに収納する。ストレージの説明文になる、色々な果樹の種と書かれていた。何の果物かもわかんねーのか。まぁ、育ててみての楽しみだな。

「野菜の種は、全部の種類買っていく。四袋ずつもらっていいか?」
「はーい、あと、あのお姉さんのお買い物ですね」

 俺の方はあっさりと終わったのに、メルリアは手に取ろうとしてはやめている。

「全部俺が出すから、全部買え」
「でも」
「補償金が、ある。それに、料理作って貰ってるからな」

 給金を払うと言ったのは、断られた。「わがままを言って住ませてもらってるのに」ということだった。メルリアが居ないと、美味しいご飯にはありつけないので、ありがたい限りだけども。

「わかりました。じゃあ、このパンとお肉と……」

 メルリアが頼んだものも全てまとめてストレージにしまい込めば、少女は最後に鶏を連れて来た。卵を一日一個産むらしい。専用のおやつをあげることで、卵の数を増やすこともできるとのことだった。

「鶏のおやつも、買っていこう」
「一気にあげすぎたら、病気になっちゃうから気をつけてね」

 注意を聞きながら、とりあえず三十個だけ買い取る。鶏の形を模った野菜の塊みたいなものだった。それもとりあえずストレージにしまう。食材も種も揃った。今日の買い出しは終わりだ。

「また、待ってるよ」
「あぁ」
「あ、私、ナリスっていうの、よろしく」
「私はメルリア、こちらはルパートさん」

 メルリアがナリスと握手をして、俺を紹介する。べこっとお辞儀をすればナリスは手を振って見送ってくれた。きっと、あそこの看板娘なんだろう。