メルリアが肩を落として、床に膝をつく。喜んでるというよりは、ショックを受けてるように見えるのは……気のせいか。気のせいだ。

「私が解いて、ルパートさんに感謝されて、結婚する未来が……」

 聞こえた言葉も幻聴だ。うん、気のせいだ。

「呪いを解くようなものはありませんが、暴れた時に出て来た宝石や石ならたくさんありますよ」

 ドラゴンがキョロキョロと、自分の周りを見渡す。光の球を大きくして近づけば、確かにそれなりの数の石が落ちていた。掘る楽しみは、また今度に持ち越して今回はこれを持って帰るか。

「村に降りて来たり、人を襲ったりは、しないんだよな?」

 念のため確認すれば、ドラゴンはケラケラと笑い出す。

「大丈夫です。人間に興味はありませんから」
「そうか」
「ですが、ルパートは助けてくれたので特別です。何かあったらお呼びなさい。いつでも、力になりましょう」
「いつでも呼べって言われても」

 呼ぶ手段なんて、ないだろう。ここに住み着いてるのだろうか? 疑問に思っていれば、けほっけほっと、咳き込んで口からペッと薄赤色の玉を吐いた。

「この、けほっ」
「だ、大丈夫か?」
「私の体内で出来た石です。私の力を込めてるので、割ればすぐ私に伝わります」

 けほけほ咳き込んでいたことはなかったことのようにして、ドラゴンは澄ます。俺の周りに現れるモンスターや、人は、どこかズレてる気がする。タヌキといい、メルリアといい、このドラゴンもだ。

 ドラゴンの力はありがたいから、何かあった時のために貰っておくけど。

「それでは、私は新しい住処を探しに行きましょう。ここでは、迷惑みたいですから」
「あぁ、外のやりとりとか聞こえてた?」
「えぇ、村を襲う気はありませんが……怯えてる声が聞こえていましたので」

 ずいぶん優しいドラゴンに、胸を撫で下ろす。敵対しなくていいなら、それに越したことはない。どしん、どしん、っと音を立てながら歩いていくドラゴンを見送ってから、メルリアの肩に手を置いた。

「石、拾おうぜ?」
「あ、あぁ、はい、拾います……」

 メルリアがそこまで俺にこだわる理由は、分からない。聞いてみたい気もするが、聞いちゃいけない気がするから知らないふりをしておいた。