タヌキも食べるかはわからないが、十匹ほど釣れたから今日の分は足りそうだ。帰ろうとバケツを持ち上げれば、昼寝から起きたタヌキとオオカミが後ろをついてくる。
うん、どうして、オオカミも付いてくるんだ。
「お前も来るのか?」
問い掛ければ、アオンっと大きな声で鳴いて答える。意思疎通は出来てるみたいだな。タヌキは俺の言葉に、愕然としたようで、口をポカーンと開けてパタリと横に倒れた。
「タヌキが、タヌキが、食べられてもいいって言うんですか! ルパートは、そう言うんですね!」
バタバタと地団駄を踏みながら、地面を転がるタヌキ。いや、だって、タヌキより手伝ってくれるし。と言ったら、ますます癇癪がひどくなりそうだ。
「こんなに痩せてるし、手伝ってくれるし放置できないだろ」
「薄情ものー! タヌキのことなんてどうでもいいんですねー!!!」
泣きながらタヌキは、勢いよく駆け出していく。罠にかかったり、迷子になってるタヌキが容易に想像できるから走って追いかける。
無事に家に着いたようでメルリアに、顔を埋めて文句をつらつらと垂れていた。
「ひどいんです、ルパートはタヌキを、タヌキをおおおおお」
「おかえりなさい」
タヌキを撫でながら、俺に気づいたメルリアは顔を上げる。後ろのオオカミを見て、ふふっと微笑む。
「どんどん増えますね」
「動物を飼うのもスローライフの醍醐味だからな」
そんなつもりは、一ミリもなかった。動物といっても、牛とか、鶏とか、そういうのを求めてたんだけどな。まぁ、タヌキも、オオカミも、居てもいいだろう。
メルリアの腕の中で、ブゥブゥ文句を垂れ続けるタヌキに、近づく。
「わかったわかった、家の中に、部屋を作るから」
「タヌキのですか!」
部屋を作るの一言に、ぴくりと耳を揺らす。そして、急に立ち上がって俺の足に絡まりついた。それでいいなら、いいよ。オオカミ用の小屋も作らないといけないけど。
「じゃあ、いいです!」
単純なタヌキを持ち上げて、メルリアに渡す。庭で休んでるゴーレムに、オオカミ用の小屋を頼んでこないと。
「オオカミはついて来い」
「アォン」
「オオカミって名前なんですか?」
さすがに、それはセンスが無さすぎる。オオカミは、この世界でもオオカミと呼ばれていた。人間に「人間」と名付けるようなもんだ。
オオカミの顔を見れば、青い瞳に気づく。キレイなターコイズブルーだ。うん、よし、ターコイズにしよう。
「ターコイズだ」
「ターコイズ、不思議な、名前」
ふふふっと微笑むメルリアに癒されながら、俺もふふと微笑んでしまう。俺の笑顔を見たメルリアはまた、驚いたような顔をして、そして何も言わずにタヌキを連れて家に戻って行った。
「俺の笑顔変か?」
ターコイズに問いかけても、くぅん? っと首を傾げる。分かるわけないよな、わかってた。わかってた。