「それで、どう思ったこの歌?」
「うん、悪くないと思うな」
 前の二曲に比べると極めて淡白な真澄の反応を受けて、僕は褒められているのか、けなされているのかよく分からなかった。そんな僕の様子にはお構いなしに真澄は次の要求をしてきた。
「純さん、とりあえず純さんが今までに作った歌。全部聴かせてくれないかな?八重山のアルバム作りのお手伝いをするために聴いておきたいの」
「ああ、もちろん。」
 答えた後、僕はそれまでに作った歌を次々と真澄に歌って聞かせた。その中には島そのものの歌とは言えないが八重山を舞台にした歌、その他諸々が含まれていた。
 真澄は「じゃあ、次をお願い」と言うだけで、感想を感口にすることなく、ただただ僕に歌うことを求めた。僕が自作の歌を全て歌い終わると真澄は宙を見つめてつぶやいた。
「純さんの歌の世界。ちょっとわかったような気がする」
「ありがとう。それで、どう思ったの?」
 気になったので尋ねたがはぐらかされた。
「今日はもう遅いから、その話は明日にしましょう。じゃあ、おやすみなさい」
 真澄は立ち上がるとキッチンの方に行ってしまい、その後は姿を見せなかった。