八重山の空の太陽にように 
 明るく笑う君はティダヌファ

 港で手を振る君が小さくなる 
 二人で登った山が遠くなる
 この船が立てる白い波はやがて 
 あの砂浜で届くだろうか
 君が砂に書いた僕たちの名前は 
 波がすぐに消してしまったけれど
 心に消えない旅の思い出を 
 描いてくれた君はティダヌファ

 聴き終わると真澄は確認を求めた。
「二人の女性との思い出を一つにしちゃったわけね?」
「そうだね」
「でも、砂に名前書くなんてあたりはちょっと作り過ぎじゃない?」
 一般的に言えば真澄の言う通りだった。
「そう思うのは無理もないね。でも、これ、いかにも嘘っぽいけど実話なんだ。十八歳の子は本当に僕たちの三人の名前を砂浜に書いたんだ。すぐに波で消えたのも本当の話」
「へえ、そんなこともあるんだ。現実の世界も捨てたもんじゃないわね」
 真澄の声にはまだ半信半疑という雰囲気がこもっていた。たぶん、歌詞のその部分が実話だと思う人はいないだろうと僕自身も思っていたので、それは気にはならなかった。真澄の態度からして高評価は期待できないと思ったが、僕は一応感想を聞いてみることにした。