「それで、小浜島の歌にも何か背景があるの」
 僕を見た真澄の目が輝いていた。真澄は小浜の歌にも興味深い裏話があるのを期待しているようだった。
「残念ながら、小浜の歌には竹富みたいな深い背景はないんだ」
「へえ、そうなんだ」
 真澄は少しがっかりしたようだった。そして、僕は真澄の期待を裏切るような、さして面白くもない歌の背景を語った。
「今年の春休みのことだったんだけど、石垣島でいつも泊っているティダヌファハウスという宿で知り合った人たちと三人でレンタカーを借りて島を回った時の話なんだ。一人は三十くらいの普通の会社員の女性で、もう一人は十八歳で高校を卒業したばかりの女の子だった」
「八重山では知らない人と一緒に行動することってよくあることなの?」
 ユンタクの有る八重山の宿の雰囲気を知らない真澄にすればもっともな質問だった。
「そうだね、珍しい話ではないね」
「そうなんだ」
 真澄は自分には未知の世界があるのだという口ぶりだった。
 僕は深い話を期待していた真澄のテンションを更に下げるような話を続けた。