「いいんじゃないかな、甘えても。君は十九歳。まだ未成年だろう。一応、僕はもう成人してるからね」
「でも」
 真澄は泣きそうな顔をしていた。
「別に真澄さんといると僕が呪われる訳でもないんでしょう。今までここに住んでいた人たちがそういう目にあったことがあるの?」
 真澄は大きく左右に首を振った。
「無いわ。近くに大学が出来てからは、ほとんどが学生さんだったけど、みんな元気に旅立っていったわ」
 そういう不安がまるで無かったわけではなかったので僕は少し安心した。
「じゃあ、問題は無い訳だ」
「だけど」
 真澄は本当に申し訳なさそうにしていた。
「ああ、その代わりに真澄さんにお願いがあるんだ。僕の歌作りを手伝って欲しいんだ。実は八重山の九つの島の歌を全部作りたいと思うんだけど、まだ、出来ているのは三曲だけだから、あと六曲も作らなきゃいけない。真澄さんの意見も聞かせて欲しいんだ。真澄さんだって小説や詩を書いていたんだから、僕に貴重なアドバイスができるんじゃないかな?」
 その言葉を聞いた時、初めて真澄の顔が少し嬉しそうな表情に変わった。