誰にも気づいてもらえず、ひたすら孤独に耐えるだけの約三十年間。わずかひと月足らずの僕に対する無視と嫌がらせなど比較にもならない辛い日々。しかもその辛い日々には終わるあてなどまるでなかったのだ。どれだけ辛かったのだろうか?想像もつかなかった。
 しかしやがて、一つの疑問が浮かんだ。僕はすぐさまそれを真澄に向けた。
「ねえ、どうして、今まで誰も君に気づかなかったのに僕だけが気づいたのかな?」
 真澄はうつ向きがちだった顔を上げて僕の方を見た。それから自信なさげに自らの考えを口にした。
「純さんには、たぶん霊感があるのよ」
「そうかな、僕は今までに君以外の幽霊を見たことは一度もないけど」
「純さんの霊感はきっと弱い物なのよ。どんな霊でも見られるわけではなくて、何かの拍子に身近な存在にだけ反応する場合があるんじゃないかな?」
「なるほどね」
 真澄は同じ部屋にいて、似たような趣味を持っていたので反応した。そう考えれば、真澄の考えには納得がいかなくもなかった。
「辛い話をさせて御免ね」
 僕が謝ると真澄は小さく首を横に振った。