「私の母は十七歳で私を産んだの。母は、中学を卒業すると、すぐに家を飛び出して東京に行ったらしいの。荒れた暮らしをしていたみたい。突然に戻ってきた時にはお腹が大きくて、村では騒ぎになったって。堕胎が手遅れになってから男に逃げられたらしいの」
「結構すごい生い立ちだね」
 ドラマの中でしか聞いたことのないような話だと思った。
「小さな村だから、私の生い立ちなんて、みんなが知ってたの。だから、私は子供の頃から周囲に白い目で見られていた。学校でも友だちなんてぜんぜんできなかった」
 ふと、高校時代の自身のいじめ被害が頭をかすめた。
「それは、辛かったね」
 同情からそんな言葉が漏れたが、真澄の辛さは僕の比ではなかったのだろうと容易に想像がついた。