「ああ、確かに奇跡みたいな出会いだったけど、別に運命だとか、そんな風に思ったことはないな」
 僕の答えに真澄は少し不満そうだった。
「そうかなあ。私は二人の出会いは、偶然にしてはでき過ぎているような気がするの」
「そんなことはないと思うけどな」
 真澄は相変わらず納得がいかないとばかりに、更に踏み込んだ質問をしてきた。
「純さんは、何か純さんを導く不思議な力みたいなものを感じたことはないの?」
「ないよ」
 嘘ではなかった。そんなことを感じたことは全くなかった。
「そうなんだ」
 失望したように言った後、なぜか不満げな様子が消えて、真澄はどこか夢見心地に自説を持ち出してきた。
「私はね、奈々さんの弟さんが二人を引き合わせてくれたような気がするの」
「ええ、それは考えすぎじゃないかな。僕はそんなことを感じたことはないよ」
 随分と突飛なことを考えるものだと思った。しかし真澄はまだ自説を捨てがたいようだった。
「じゃあ、純さんはどうやってのむら荘にたどり着いたの?」