「え、私の声、聞こえたんですか?」
 姿の見えない声の主はむしろ僕以上に驚いているようだった。
「ごめんなさい、済みません。失礼します」
 声の主はひどく慌ててどこかに去ってしまったようだった。

 夏休み最初の土曜日、不思議な声を聞いたその夜、僕たちの夏が始まった。