僕と真澄の暮らしはやはり普通とは言い難く、思うに任せない部分もあった。しかし、花火を見ている間はそういうことを全て忘れていた。二人並んで花火を見ているだけで僕はとても幸せな気分だった。

 花火大会がフィナーレに近づいた頃には、ビールも食べものも全てなくなり、デザート代わりの綿菓子もなくなっていた。フィナーレのスターマイン、いわゆる一斉打ち上げの仕込みに時間が掛かっているのか、花火の打ち上げが途切れた時に少し寂し気に真澄がつぶやいた。
「もう夏も終わりだね」
「うん、まあ、そうだね」
 そうは言ったものの、夏休みはまだたっぷりと残っていたので、夏が終わるという実感はまだ僕にはなかった。しかし、真澄は僕とは違っていた。
「夏の終わりって、なんか切ない気分にならない?」
 真澄は妙に感傷的だった。
「そうだね、僕もそう思うよ。」
 僕は深い考えもなく真澄に同意した。
「日本には春も、秋も、冬もあるのに、どうして夏の終わりだけが切ないのかな?」
 真澄はそれが究極の疑問であるかのようにつぶやいた。