しばらくして、最初の花火が空を染めた。そして、少し遅れて花火が弾ける音が僕たちの元に届いた。
「じゃあ、乾杯しようか」
「そうね」
 僕はビールの缶を開け中身を真澄のグラスに注いだ。その後、真澄が僕のグラスにビールを注いでくれた。
「乾杯」
 僕たちは声を揃えてグラスを合わせた。そして、二人とも一気に中身を飲み干した。
「旨い、こんな旨いビールは初めてだ」
 僕がそう言うと真澄も同調した
「生きているうちは未成年だったから、飲んだことなかったけど、ビールって美味しいのね」
 僕たちはすぐにビールを継ぎ足して、しばらく黙って、次々と打ち上がる花火に目を凝らした。花火を見つめる真澄は心底嬉しそうだった。
 
 その後も次々と花火が打ち上がり夏の夜空を照らした。僕たちは買ってきたものを食べ、ビールを飲みながら、二人きりの花火大会を楽しんだ。その間、僕たちはほとんど口をきかなかった。ガラス戸の向こうに打ち上がる花火をただただ見ていた。光と音に彩られた時間は実に穏やかだった。