その後、僕たちは二人でできるトランプのゲームをつぎつぎと探しては遊び続けた。初めはこわばっていた真澄の顔もゲームを続けるうちに少しずつ笑顔になっていった。たとえ外に出られなくても、二人でトランプに興じることができるようになったのは僕たち二人にとって幸せなことだった。

 二人でできるゲームを一通りやり終えた頃にはお昼が近づいていた。真澄は部屋の時計に目をやると僕に尋ねた。
「ねえ、お昼は何が食べたい?」
「そうだな、暑いから冷やし中華がいいかな」
「いいわね、じゃあ、お買い物をしてきてくれる?」
 真澄は立ち上がってキッチンにあったメモ用紙をとペンを見つけると、冷蔵庫の中とキッチンのあちこちを調べた後、買い物のリストを作って僕に手渡した。
「とりあえず、これだけあればいいかな。ごめんね、私が行ければいいんだけど」
「気にすることはないよ、じゃあ、行ってくるね」
 僕は部屋を出て自転車で近所のスーパーに出かけた。外食ばかりだった自分が二人分の昼食の買い物をしているのは何だか不思議な気分だったが、それはまた、嬉しくもあった。