「真澄さんだって前回は歌詞を完全に秘密にしていたじゃないか。今度は僕が真澄さんを驚かそうと思っているんだ。それにちょっと照れくさいしね」
「ふ~ん、そうなんだ。じゃあ、期待しないで待ってるわ」
「いや、期待して待っていて欲しいな」
「あら、純さんにしては珍しく自信たっぷりね」
「ああ、きっと真澄さんも喜んでくれると思うよ」
 真澄は少し不機嫌だったが、最後の歌の構想はまだ真澄には聞かせられなかった。真澄を驚かせ、喜ばせるためにはそれが必要だった。真澄が作詞をした「新城哀歌」は余りにも悲しい歌だった。だから、せめて最後は真澄をもっと幸せにしてあげたかった。そうすることが最後の歌を作る目的になっていた。

 八月十五日(土)

 午前中に必要な買い物をするために都心に出た後、僕は部屋に戻りヘッドフォンを被って歌作りに没頭した。そんな僕の様子を見て、真澄は全くと言っていいほど声を掛けてこなかった。
 結局、歌が完成する前に僕は眠りについた。