「いや、東屋があるから、そこでのんびりできるよ。僕はそこでずっと海を見ているのが好きなんだ。とにかく海が綺麗だから何時間でも見ていられるよ」
「なるほどね。ところで、波照間には他に見るべきものはないの?」
 真澄が聞いてきたので答えてあげた。
「南十字星が目当てで来る人も多いよ。南十字星は他の島でも見えるんだけど、天体観測の邪魔になる光が殆どないのが波照間の利点なんだ」
「南十字星が日本でも見られるなんて知らなかったわ。それで、純さんは南十字星を見たことあるの?」
 真澄を羨ましがらせたいところだったが、そうはいかなかった。
「残念ながら、まだ見たことがないんだ」
「それは残念だったわね。ところで今度は、どういう歌を作るつもりなの?私はどんなお手伝いをすればいいのかしら?」
「いや、今回は手助けは必要ないよ」
「何だ、つまらないな」
 真澄は少し不機嫌な顔をして見せてからその後を続けた。
「それで、どんな歌になるの?」
「秘密」
「何それ?」
 そう言って真澄は頬を膨らませた。