八月十四日(金)

 夜、僕たちはまたノートパソコンを前にしていた。前の日にできた新城島の歌は真澄の希望で僕が名付け親になることになっていた。タイトルが「新城哀歌」に決まった後、僕たちは次の歌について話を始めた。
「さて、真澄さん、とうとう残るのは波照間島だけになったね」
「波照間島ってどこにあるの?」
 僕はネットで八重山の地図を探し、それを真澄に見せた。
「この地図だと西表のすぐ南にあるみたい見えるけど、ここに線が引いてあるだろう。これは実際の距離を縮めているって意味なんだ。つまり本当は、波照間島は西表の遥か南にある絶海の孤島で、石垣からは高速船で1時間もかかるんだ」
「他の島と比べると随分と遠いのね」
「ああ、そうだね。人が住んでいる島としては日本で一番南にあるからね」
「へえ、そうなんだ。それでその最南端の島はどんな所なの?」
 最南端と聞いて真澄の島への興味が増したようだった。
「そうだね。島中がサトウキビ畑みたいで、静かな所だよ。売店はいくつかあるんだけど、食事ができるお店が少ない上に休みが多いのが困ったところだね」
「なんだかつまらなそうな所ね」
 真澄は少し失望したような声を出した。
「いや、波照間は八重山の中でも人気が高い島なんだよ」
「一番南だからって理由だけで?」
 真澄は納得がいかないと言いたげだった。僕はすぐに納得のゆく説明をしてあげた。