「まず、僕が三線を弾きながらパートごとにラララで歌うから。一緒に歌いながらメロディーを覚えて」
「うん、分かった」
 真澄の答え方には何か迷いのようなものが感じられた。
 僕たちはパート毎に繰り返し歌ったら次のパートに進むという過程を繰り返した。その後、通しで歌う練習をした。真澄がきちんと歌えるようになるまでたいして時間は掛からなかった。

 頃合いを見て僕は真澄に尋ねた。
「さて、もう大丈夫かな?」
「うん、大丈夫だと思う」
 真澄の声はどこか自信なさげに聞こえた。
「じゃあ、ちゃんと歌詞をつけて歌ってもらおうか」
「うん、なんかちょっと怖いな」
 歌詞を付けて歌うと聞いた途端なぜか真澄は弱気になった。
「じゃあ、録音もしてみようか」
「ちょっと、嘘でしょ」
 狼狽える真澄を無視して僕はノートパソコンでの録音の準備をした。僕はマイクを持てない真澄のためにスタンドも用意して高さを調節してあげた。
「じゃあ、このマイクの中心に向かってしっかり歌ってね」
 僕がそう言うと真澄は思いもかけないことを言ってきた。
「ねえ、純さん。やっぱり私の歌詞で歌を作るのを止めにしない?」