「大学の同級生の隆彦君からメールが来てね。『沖縄にいるなら砂浜にハートを描いて、それを写真に撮って送れ』と言ってきたんだ」
「どうしてそんなこと頼まれたの」
 妙なリクエストに対する真澄の疑問はもっともだった。僕は丁寧にその理由を伝えた。
「僕と隆彦君が所属しているサークルの卒業生、優さんと美和さんが結婚することになってね。メールを送ってきた隆彦君は二次会の幹事だったんだ。それで、メッセージを集めた色紙に貼る写真を僕に頼んできたんだ」
「ハートの写真を送るのがそんなに恥ずかしいことだったの?」
 真澄は不思議そうに僕の顔を覗いた。
「いや、その時はカヤックで下地島に渡ったんだけど、インストラクターさんが昼食の用意をする間、かなり暇だったんだ。だから、どうせ送るなら、もう少し気の利いたものにしようと思ったんだ」
「それでどうしたの?」
「そうだね。これも実物を見てもらった方が早いな」
 僕は自分が浜に描いたものの写真を真澄に見せた。真っ白な砂の上に棒状の白い珊瑚の欠片がいくつも並べられハートを形作っていた。そのハートの中には、やはり珊瑚の欠片で新郎・新婦の下の名前がローマ字で描かれていた。
「まあ、素敵、これ純さんが作ったの、信じられないな」
 写真を見る真澄は如何にも十九歳の女の子らしい表情を見せた。