「それで真澄さんの初恋はジ・エンドになったんだね」
「ううん、まだ少し続きがあるの」
 それは僕にとってかなり意外な言葉だった。
「え、何があったの?」
 真澄の話を急かしてばかりいる自分がすでに情けなく思えていた。
「二年後にね、彼に再会したの。ああ、再会とは言えないかな」
「彼には何処で会ったの?」
「東京でね。その日は会社の創立記念日でお休みだったの。どうしても見たい映画があったから珍しく都心に出かけたの。映画館に向かって歩いていたら、通りの反対側に修学旅行の高校生のグループがいてね。その中に彼がいたの。彼は私と同じ方向に歩いていたの」
 真澄はその後を話すのが少し辛そうだった。
「私はね、全力疾走して横断歩道を渡って、前の方から彼に近づいたの。声を掛けようとした時に彼が女の子と手をつないでいるのが見えたの」
 真澄の言葉がまた一瞬途切れた。
「私は慌てて顔を背けたの。彼は私に気が付かずにそのまま行ってしまった。それが彼を見た最後」
 真澄はしばらく沈黙を続けた後、思い出したようにまた話し始めた。