「ねえ、図書室以外の場所で、何か思い出に残るようなイベントはなかったの?」
「強いて言うならば、臨海学校かしら」
 真澄はまた少し夢をみるような目をして答えた。
「臨海学校って、泊りがけで海水浴に行く行事だよね」
「うん。バスで移動して二泊三日だったの」
 山間の中学生の海への旅、何かが起こりそうなシチュエーションに思えた。
「もしかして、夜中に二人で抜け出したりしたの?」
「まさか、そんなことできる訳ないじゃない」
 僕の想像はあっさり否定された。
「じゃあ、何があったの?」
「今の人から見ればつまらないことよ」
 真澄は少し照れくさそうな顔をした。僕は続きを話すように真澄を急かした。
「笑ったりしないから話してくれないかな?」
「本当につまらないことなのよ」
 同じような前置きをして真澄は続きを話し始めた。