「そうでもないの。結局、お互い口には出さなかったけど、彼も私のことを好きでいてくれたと思う」
 真澄は少し嬉しそうな顔をした。少しだけ嫉妬心が湧いた。
「なんか昔の演歌の歌詞みたいな話だね」
「そりゃあ、そうよ。だって正真正銘、三十年以上昔の話だもの」
 真澄を促すために僕は次の質問を投げかけた。
「ところで、二人はどんな風に仲良くなったの?」
「中学二年の時にね、私たちは図書委員になったの」
「図書委員同士の恋か。なんか、そんな映画二つぐらいみたような気がするな」
「ねえ、私の初恋の話じゃなかったっけ?」
 真澄が僕をからかった。
「ごめん、そうだったね。続きを聞かせて」
 一瞬、呆れたような表情を見せてから、真澄はまた話し始めた。
「知っての通り、図書委員って昼休みとか放課後とかに貸し出し当番があるでしょ」
「そうだね」
「田舎の学校はクラスが少ないから当番が回ってくるペースも速かったの。だから私たちは結構一緒に過ごす時間が多かったわけ」
「でも、ただ一緒にいる時間が長かったからって恋に落ちるってものでもないでしょう。何か共通の話題とかあったのかな?」