その他、島のほとんどを占める牧場、灯台、新城島を間近に望む仲本海岸の写真などを見せたが、真澄は終始無言で写真に見入っていた。
 写真を見せ終わるとようやく真澄が感想を洩らした。
「海がすごく奇麗な、とても素朴な島なのね」
「そうだね。泊ったことは一度しかないし、とにかく人と会うことが少ない島だから、この島では人との関りはほぼゼロに近くてね。そんなわけでロマンチックなエピソードなんて全くなし」
 僕は言い訳めいた前置きをしてから、少し前から頭に浮かんでいた提案を持ちかけることにした。
「そこで、相談があるんだけど」
「何かしら?」
「真澄さんの初恋の話を聞かせてくれないかな?」
「ええ、どうしてそこに話がつながるの?」
 真澄は怒っているとまではいかないまでも、かなり不機嫌な返答をした。僕は少々ひるんだが引き下がる余裕はなかった。
「いや、少しネタにつまっているんだよね。だから自分のことじゃなくて、真澄さんの話から何かをつかみ取れないかと思ってね」
 予想はしていたが真澄の反応は相変わらず芳しくなかった。
「前にも言ったけど、私の昔の話なんてひどい話ばかりよ」